甘ったるい彼等④【短編集】(雪男) (ページ11)

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you side

『だって、こうやって毎月赤ちゃんを迎える準備してくれるのも、お腹で育てるのも、痛い思いして産んでくれるのも、全部Aじゃん？

赤ちゃんを迎えるのは二人なのに、産まれてくるまで俺はどれも代わってやれないから。ひとりで頑張ってくれてごめんね、ありがとうっていつも思ってる。
　
ほんとにありがとう』

「ぁ、えっと」

それって…

『俺はいつかAと家族になりたいって思ってる。
今すぐに考えてくれなくていいから、そう思ってるって知っててくれるだけで俺は幸せだから。』

日々、彼からの愛情は痛いほど感じているつもりだった
でもここまで考えてくれているとは思ってもなくて

幸せでたまらなくて、そっと照の頬を寄せて唇を重ねた。

「ありがとう」

いつも真っ直ぐな愛情をくれて
温かな優しさで包んでくれて
力強く守ってくれて

そんな思いが唇から伝われと願いながら何度も啄むようなキスを贈っていると、横向きに向かい合っていた体が反転し、視界が照と天井に変わる。

.

『はぁぁ…もう…』

「なに？」

『そんなにしちゃダメ』

「なにが？」

『…無自覚なの？』

「自覚は、ある」

『やだもう』

「んふ、ごめんね？」

『…そのごめんは受け取っとく』

「終わったらいっぱいしようね？」

『…………いっぱい？』

「…」

『ねぇ、いっぱい良いの？』

「…」

ニタニタとスマホのカレンダーを開きだした照のおでこを小突いて背を向ける。

『早く終わるといいな…』

「…うん」

その"早く"には多少の邪念が混じっているけれど、後ろからお腹を温めてくれる手の優しさは本物だから許すとする。

恥ずかしくて言えないけど、私の方が早く貴方に触れたいの。

こんな愛情を受け取ってなにも出来ないもどかしさって無いんだから。

終わる頃に合わせて下着を新調しよう

こんなに幸福な気持ちにしてもらったんだからお返しは期待してていいよなんて言ったら、きっと二度寝できなくなるんだろうな

盛大にニタつく照を想像して、逞しい腕の中で眠りに落ちた。

Fin.