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蓮 side
結局、日が昇りきるまで部屋を出ることは出来なくて。
でもたまにはこういうのもいいよなと笑い合って、チェックアウトギリギリまで部屋を楽しんで、旅館の仲居さんにオススメしてもらった展望台に向かって車を走らせる。
「うわぁ…！」
『おぉ…』
『「めっちゃきれー！」』
『ハモった(笑)』
あまりの見晴らしの良さに二人して感動を抑えられない。
見慣れた東京の街並みを、少し離れた少し高い場所から見下ろすだけでこんなにも心が震えるものなのかと感動する。
「ぁ、いい匂い」
その言葉に横を振り向けば、懸命にカメラのシャッターを切っていたAが目を閉じて、嗅覚に意識を澄ませている。
見れば近くにたくさんの金木犀が咲いていて、懐かしい香りを放っていた。
『金木犀だね』
「これが金木犀なの？」
『ん？』
「私、金木犀の香りってちゃんと認識してなかったな」
『え、ほんとに？』
「金木犀の香水とかよくあるじゃん？あれとは全然違うんだね。
本物はもっと優しくていい匂い」
この匂い好きと笑うAがあまりに可愛くて
外だと言うのに唇を合わせにいってしまう。
「っ…だめ、蓮」
『いいの。ご褒美なんでしょ？人も居ないし』
これ見よがしに手まで繋ぐと、周りをキョロキョロと見回した後
きゅっと握り返してくれるから嬉しくなった。
『ありがと』
「ご褒美だし…」
『だし？』
「…私も嬉しいから」
その言葉にまた心が潤って癒される。
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作者名：Muu | 作成日時：2023年10月28日 8時
