甘ったるい彼等④【短編集】(雪男) (ページ1)

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【🖤】fragrant olive ページ1

蓮 side

"ﾁｭﾝﾁｭﾝ"と、自宅ではあまり聞くことのない音で目を覚ますと
冬支度で丸くなった鳥たちが木々に集まっているのが見えて頬が緩んだ。

澄んだ空気が心地よくて布団の中で思いきり体を伸ばすと
関節が大きな音を立てて、やばい…と焦って隣を振り向く

「んん……れん？」

『ごめん、起こした』

「んー…」

案の定起きてしまった愛しの彼女は瞼も開けず、もぞもぞと俺の手を探すからこちらから迎えに行って指を絡ませる

『服、着ないで寝ちゃったもんな。寒い？』

「ぅーん…」

『毛布もう一枚あるよ、持ってこよっか』

キャミソールと下着だけ身に付けたAが、俺の腕を布団の中に引き込み小さくなるから声をかける。

昨日は数ヵ月ぶりの連休、Aと久しぶりの逢瀬だったことに加え、サプライズだと気になっていた郊外の旅館を予約してくれていて、イレギュラーな場所で味わう久しぶりの体温に二人して浮かれて盛り上がった。

「…蓮がいい」

『うん？』

「こっちきて。さむい…」

『ふはっ、うん』

ん。とスペースを空けられたところへ身体を寄せると満足そうに
口許を緩めるから、抱き締めておでこにキスをする。

はぁ、たまらない…
昨日あれだけ触れ合ったのにまだ欲しくなる自分の欲深さに笑えてくる。きっと振られるだろうけどダメ元だ。

『ねぇ＿＿』

「……いいよ」

『え？意味分かってる？』

「分かってるよ、蓮のご褒美だって昨日も言った」

だから好きにして？なんて、そんな殺し文句言われちゃったらさ
朝の爽やかな空気なんか無視してガッツいちゃうし、この後の観光も楽しみにしてたけど、一日部屋でもいっかなんて思ってしまうのは仕方ないと言うか、なんと言うか。

幸せだ。

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