甘ったるい彼等②【短編集】(雪男) (ページ10)

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you side

所謂、夜のオトモダチになって一年が経とうとしていた頃
ふと点けたニュースに"二組同時デビュー"と映る彼を見つけ
ひどくショックを受けた。

隠されていたから、なんてそんな小さな理由じゃない
この気持ちを彼に伝えることは許されないと悟ったから。

始めは寂しさを埋めるためだけの男だったのに
今は彼が離れていってしまうことが、何よりも怖い

これ以上の関係になれば、彼の輝かしい未来の陰りになってしまうかもしれない。なにより何の誓約もない曖昧な関係でいれば"別れ"も訪れない。

ならば…と
亮平にこれ以上惹かれてしまわないよう、好意を漏らしてしまわないよう、必死で欲を隠して過ごした。

.

『Aちゃん』

「なに？」

『俺、Aちゃんが好き。気付いてるよね？』

気付いていないわけではなかった。
ホテルだけだった逢瀬が、食事をしたり、映画を観に行ったり、少し遠出をして一泊してみたり
身体の関係を持たない遊びが増えているのが、何よりの証拠であったと思う。

「…知らない」
『嘘つき』

「アイドルくんがオトモダチなんかに入れ込んじゃ駄目」
『なに？アイドルだから駄目なの？』

『ねぇそんな理由？』

少し怒っているのか口調が早い
肩を掴まれ顔を覗き込まれると、気持ちまで見透かされているような気がした。

『アイドルである前に、人間だし男だよ
　好きな人を自分の物にしたいって思う気持ちだってある

　Aちゃんも俺を好いてくれてると思ってたんだけど
　違った？』

「違ってないけど…
　また捨てられるんじゃないかって不安になるのも
　私なんかが亮平を縛ってしまうのも、全部怖い。
　今の関係なら縛る権利はないから」

『俺がよそ見したっていいってこと？
　変なの。俺は貴女しか見てないしこんなにアピールしてるのに

　でも、ごめん…
　言うの遅かったから不安にさせたよね
　こんな関係ズルズル引き伸ばす情けない男でほんとごめん』

『Aちゃんが好きです。俺に大切にさせてください』と
真っ直ぐに見つめられながら言われてしまうと、もう自分に蓋をすることはできなかった

『俺は貴方が嫌って言っても一生離れてあげないから
　Aちゃんはありのまま俺を愛してよ』
　

『重さ比べしてみる？俺もなかなかだと思うけど』と笑う彼の横に居れば、この深く負った傷も亮平と出会うためのものだったのだと、愛おしく思える日が来るような気がした。

Fin.