甘ったるい彼等②【短編集】(雪男) (ページ6)

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照 side

「ん？」

『大丈夫だよ、A
　もう俺、大丈夫』

そう伝えると、今日一度も合わなかった目がやっと俺を捉え
堪えていたのであろう大粒の涙がこぼれ落ちた。

ここ、と胡座の上を叩くとおずおずと近寄ってくるから力一杯抱き締める。

『ごめんな、怖かったよな』

必死で首を横に振っているが、止まらない涙が答えだろう。

きっと昼間に『ごめん、体調悪い。』と送ったところから不安で仕方なかったに違いない

俺は体を気にしている方だし、滅多にこんなことにはならないんだけど、季節の変わり目でやられてしまった。

甘えたいし、甘えられたいとは思ってるけど、こういう心配を掛けるのはほんとに不本意で、申し訳なさから俺まで泣けてくる

.

『…ねぇAさ、すごくない？』
しばらく抱き締め合っていると、ふと思う

「なにが、？」
『俺のこと運んだんだよね？』

「うん、ここでいい…とか言うからいいわけあるかー！って」
『ふは、めちゃくちゃすごいよ？重かったでしょ』
「愛のパワーだった」

火事場のなんとかって言うんじゃ…って言いかけたけど、愛のパワーのが嬉しいから黙っておいた。

「…けどちょっと怖かった。起きなかったらどうしようって」
『ん、ごめん』

「いいの、でもごめんは嫌」
『うん、ありがとう、ほんとに』

「ね、元気になったら抱っこしてくれる？」
『抱っこでもおんぶでもなんでも、仰せのままに』

胸に手を当ててそう言うと「王子様みたい！」とやっと嬉しそうに笑うから、俺もつられていひひと笑う。

いやでも、Aの世話焼きっぷりがたまらなく可愛くて嬉しかったから、たまには弱いとこ曝け出してもいいのかななんて。

Fin.