甘ったるい彼等②【短編集】(雪男) (ページ29)

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you side

現在時刻23時。
一昨日の朝8時に送ったLINEに今もなお既読がつ付かない
おかしいと、昨日電話をかけてみたけどそれにも反応は無かった

これが一般カップルならもう喧嘩が始まってもおかしくない頃合いだろう

でも私たちは違う。彼は普通の仕事をしていないし、私もそれを理解しているつもりで

だけど、今まで一度だって丸二日も連絡が来ないなんてことはなくて、事故や事件に巻き込まれてはいないだろうかと心配になってきた。

向井さんに連絡してみる…？
メンバーさんとは何度かお会いしているけど連絡先を知っているのは彼だけで、頼るなら彼かなと考える。

【Koji】と表示された画面とにらめっこしていると
『A』と肩を叩かれ、驚いてスマホを落とした

振り返ると同時にイヤホンを外すと、スマホを拾ってくれている涼太の姿

『はい、どうぞ』

「ぁ、え、ありがと」

『ごめんね、連絡返せなくて。ちょっとバタついててさ』

『洗面所借りるね』とキッチンへ荷物を置き、リビングを出ていく彼を見つめる

『あ、そうだ、ただいまA』

『約束忘れるとこだった』と笑う彼は全くいつも通りで、こちらがどんな思いで過ごしていたのかとか、なんで既読すらつけてくれなかったのとか、言いたいことが塞き止められなくなりそうで、胸のざわつきをかき消すためにテレビを点けた

『A？』

いつも料理は二人でやるから、ソファーから動かない私を不思議に思って彼が近付いてくる

『怒ってる？』

「別に、、」

『ただいま言うの忘れちゃったからかな？
　俺そんなことで喧嘩したくないよ、ごめんねA』

同棲はしていないけど、合鍵で入ってくるときは＜ただいま、おかえり＞を言い合う約束。涼太が言い出したのに

そういう二人だけのちっちゃな約束を守る度に幸せを感じてるのは私だけ？もう、それすら面倒臭くなってるの？

「そんなことって何？
　二日も連絡できないほど忙しかったんでしょ？今日は帰ってよ
　私なんかと居ないで家でゆっくりして」

『ねぇ、Aごめんって
　連絡もさ…その、、』

「いい。言い分け聞きたくない
　ごめん涼太、今日は一緒に居たくない」

『待って話聞いて』と諦めの悪い彼に無理矢理荷物を押し付けて
玄関へ追いやる

「何に対してのごめんなの？適当に謝んないで」

玄関から出渋る涼太にそう言い放つと、また小さくごめんと呟いて出ていってしまった

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