甘ったるい彼等②【短編集】(雪男) (ページ27)

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you side

数日が経ち、貰った薬が効いたのか身体の調子は段々と落ち着いてきたけど、気持ちは深く沈んでしまったままで

このままでは勘づかれてしまうと、蓮の前ではできるだけ明るく振る舞った

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ベランダ前のカーテンを全開にしてクッションと共に座り込む
蓮が帰ってくる前に気持ちをリセットしないと上手く笑えないから、こうしてぼんやり何も考えない時間を作るようになった。

どれくらい経ったのか

薄暗くなった空の下、帰宅を急ぐ母親と楽しそうな子どもの声が聞こえてきて堪らなくなる。また溢れてしまった涙を拭ってご飯の支度をしようと部屋を振り返ると、蓮が立っていて驚いた。

「ぇ、あ、おかえり。気付かなくてごめん、すぐご飯にするね」

涙に気付かれてはいないだろうか、蓮は人の気持ちに鋭い。
そして、大切な人間が辛くなっていると分かればそれをフォローするまで離れないしつこさを兼ね備えてる

キッチンに向かおうとすると腕を引かれ、抱き締められた

『ねぇ、何か隠してるよね』
「…なにも、無いよ」

まずい、と咄嗟に胸を押すけどびくともしない

「ねぇ、痛い」
『ごめんA、俺知ってるんだよ』

抱き締められる力が強くなって、表情が見えなくて不安になる

『なんで産婦人科なんて行ったの？』

優しく身体を離されてやっとまともに彼の顔が見えると、予想よりも不安げな表情をしていてもう隠せないなと悟った。

それでもなかなか話す勇気が出ずに黙っているとまた抱きすくめられる

『もしかしてさ、赤ちゃんできた…？』

ゆっくり話すそれに否定の意味で首を振る
もう顔を見ることはできなかった

「大丈夫、できてないよ。蓮ちゃんとしてくれてるでしょ？
　ごめんね心配かけて。ちょっと疲れてただけだって
　体調管理も仕事のうちなのにね、参った参った

　それにほら、もしできちゃってもちゃんとするし。

　…ちゃんと」

蓮の腕から逃げ、キッチンへ避難し一生懸命話す。
要らないことまで気付かれてしまわぬよう、努めて明るい声を出すものの「ちゃんとする」という言葉の重さにやられてしまう

『ちゃんとって何？』

「…ごめん」

『A、俺怒ってる。これはAだけの問題じゃないよ』

「うん…」

『ちゃんと話そう？あっちいこ』

溢れる涙を今度は蓮が拭ってくれて、二人でソファーに腰かけた

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