甘ったるい彼等②【短編集】(雪男) (ページ21)

今日:38 hit、昨日:321 hit、合計:201,656 hit

| ページ21

康二 side

「出発しんこーう！」
『よっしゃ安全運転でいくでぇ』
「おねがいしまーす！」

SAから出て高速に入ると、おもむろにミントのガムを開け差し出してくれるA

『俺ガムいらんで？』
「あっ…そっか」
『Aが食べ？』
「んー、あとでにする」

「パンあるし～」とガムを包み直してメロンパンにかぶりつくから、ちょっとモヤっとする

『俺ストローいらんよ』
「あ、ごめん、私のと交換するね』

『お金は気にせんでえーよ』
『眠かったら寝ていいし』
『寒かったらゆーてな？』

そのあとも、ペットボトルにストローさして渡してくれたり
ガソリンや高速代を払おうとしたり
眠いくせに必死で起きてるし、口数も少ないし、なんか、、
いつもより借りてきた猫みたいに大人しくて調子が狂う

このままモヤモヤした気持ちで居たくなくて、さっきより小さなSAに入った

「トイレ？」
『いや、違くて』

『Aさ、その、、今、俺と居るんやで？』
「え？」
『やから、俺と居るのにさ、』

そこまで言って何て女々しいことを言おうとしているのだと躊躇してしまう

Aを見ると「あっ…」と思い当たるような表情をしてて、更に申し訳なくなった

.

前の彼氏が車好きな年上で、強い拘りを持っていたとは聞いていた。

けど、正直こんなに染み着いてるとは思ってなくて

悲しいのか悔しいのか、自分でもよく分からん感情になってきて
このままやったらいらんことまでゆーてしまいそうで、無理矢理笑顔を作ってAの方を振り向いた。

『いや、ごめん、なんでもない。忘れて？』
シートベルトに手を掛けようとすると、それをそっと阻止される

「ごめんね、康二」

『ちゃうねん…謝らんといて』

「んーん、ごめん。私だったら無意識に出るとか一番嫌だもん」

.