甘ったるい彼等②【短編集】(雪男) (ページ16)

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辰哉 side

『その、記念日、とか…』

「今日？何にもなくない？」

『だってご飯豪華だし、花まで飾ってあるし』

「え、あぁ、そう！お花！これね、先輩にもらったの」

嬉しそうに話すAを見て、お世話になった先輩が今日退職するって言ってたなと思い出す
　

「Aちゃん紫が好きでしょってくれたの、可愛いよね」

『だから上機嫌だったんだ？』

「まぁそれもあるんだけどね」

「私ってさ、紫のイメージある？」
『んや、パステル系じゃない？』
「だよねぇ。私も今日までそう思ってた」

俺に負けず劣らず色白なAは淡いパステルカラーがとてもよく似合って、服や小物なんかもそういう色味を集めていたはず

「今日先輩にもらったお花見て［やっぱり］とか言う同期に
　辰哉とおんなじ質問したの
　そしたら、デスク見ろって笑われちゃって」

笑われた？よく分からないから『うん』と先を促す

「で、自分のデスクに戻ってみたらさ…」

Aにスマホを見せられたので覗くと、紫で溢れるそこ
マウスパッドに付箋、ペン立てにハサミ、電卓、ボールペン
スケジュール帳にカレンダー
まぁよく集めたもんだと、思わず感嘆の声が漏れる

『俺のこと好きすぎない？』

「ね？無意識すぎてほんとに恥ずかしかったんだけどさ
　思い返したら、ここぞって時は紫の何かを持つようにしててね
　たぶん、辰哉と一緒に戦ってるような気になってたんだと思う

　あの時頑張れたのも、二人だったからかぁとか納得したらさ
　めっちゃ辰哉のこと愛しくなっちゃって、、
　料理も張り切っちゃいました」

ちょっと恥ずかしそうにハニカミながら
「いつも側に居てくれてありがとう、大好きだよ」と伝えられると何だか目頭が熱くなってくる

あんまり多用すると薄れちゃいそうだから普段は滅多に言わないけど、今日は何百回でも言ってあげたい

『俺も大好きだよ、愛してる
　いつも本当にありがとう』

デビューする前から隣を歩いてくれていたA
メンバーカラーが決まったことを一番に伝えたのもAだった

俺の代わりに、俺の色を身の回りに置くだなんていじらしくて
俺の全部を投げ出してでも守ってやりたくなる

男は守るものが増えれば増えるだけ強くなる生き物だからさ
いつか増える家族のためにもっと逞しくなってみせるよ

Fin.