検索窓
今日:36 hit、昨日:13 hit、合計:17,153 hit

53.知らない気持ちの話 ページ6

楽しく談笑している玲王さんと誠士郎くんに続くように歩いていく。

『…Aはさぁ――』

『…もっと、人に甘えた方がいいよ。俺みたいに』

「…っ〜!」

やっばい…思い出したら、また体熱くなってきた。
どうしたの、私…。今までこんなことなかったのに…。

「…で、そこに行こうと思うんすけど糸師さんは大丈夫ですか?」

「へっ?」

どうやら私に話が振られていたみたいで、玲王さんが私の方へと振り返った。

「ご、ごめんね…聞いてなかった……」

玲王さんは「いいですよ」と笑ってもう一度説明してくれた。

「俺のおすすめのカフェがそこにあるんで、行ってみないかなーって」

「う、うん。行こうかな」

ははは…、と無理やり笑って玲王さんに言葉を返す。
玲王さんは「それならよかったです!」と笑ってカフェへの道を先導してくれた。

「……A、まだ調子悪い?」

「え、あ、そ、そういうわけではないよ。うん」

誠士郎くんは目を細めてから、面倒くさそうに欠伸をした。

「そー。ならいいや」

「…」

「せ、誠士郎くん…?」

私の方へと振り返って、近づいてくる誠士郎くん。
私は彼との距離をとるように後ろへと後ずさる。

「え、えぇと……?」

「……A」

「は、はい」

急に名前を呼ばれたのでつい、畏まって返事をしてしまった。

「ど、どうしたの。誠士郎く――」

コツン

そんな音がした気がして。
目をぱちぱちと瞬きすると、目の前には整っている顔がひとつ。
彼と触れ合っている額から生暖かい彼の体温が伝わってくる。

「せ……せ、…せい……」

日本語とはとてもじゃないけど、認識できないような声が自分の口から漏れていく。

「…A、じっとしてて」

誠士郎くんの息遣いまで聞こえてしまう。
こんな距離でじっとしているなんて、無理に決まってる。

誠士郎くんは白髪の前髪を片手でかきあげて、「うーん」と唸る。

「熱は…ないかなぁ……」

「う、うんっ。熱はないかなぁ…!」

ようやく、誠士郎くんの行動の意味が分かった。
私の様子がおかしかったから、熱があると思ったのだろう。……で、でも額で確認する必要あった…!?

「うぉ」

バンっと誠士郎くんの胸板を押して、誠士郎くんと距離をとる。

「凪……はぁ…お前ってやつは…」

後ろで玲王さんの呆れる声が聞こえる。

「…っ」

ドキドキと心臓がなる。
何これ……何この気持ち……。
こんなドキドキして甘い気持ち、私は知らない…!

54.好きなタイプを知られる話→←52.好きになる話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (55 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
352人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - めんちさん» めんちさん、コメントありがとうございます!私もまだまだですので、一緒に頑張りましょ!💪 (6月26日 20時) (レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
めんち - めっちゃ面白いです!私も夢小説かいてるんですけど国語力なさすぎるので湊様みたいに楽しいお話つくりたいです (6月26日 14時) (レス) id: 05dd0f2a4d (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名: | 作成日時:2023年6月26日 9時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。