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52.好きになる話 ページ5

「…ひっく…っ…」

涙が止まらない。止まってくれない。
必死に目をゴシゴシと擦る。
後で腫れるのなんて分かってるけど、今はとにかく涙を止めたくて。

「…糸師、さん」

視界がボヤけて、誰が近づいてきたか分からない。

「…ふたりっ、とも…っ……」

初めて出会った玲王さんに涙を見られるなんて恥ずかしくて。頑張って、涙よ止まれ、止まれって。

あぁ…今、私きっと酷い顔してる。
涙でグチャグチャで…玲王さんに…誠士郎くんに、見られたくなかったなぁ…。

「…A」

誠士郎くんが私を呼ぶ声が聞こえる。

「…せい、しろー…くん……っ」

「…うん」

「さっきの…っ…綺麗だった…カッコよかった…」

涙声で自分でも何言ってるかわからないけど、とにかくこのドキドキした気持ちを誠士郎くんに伝えたいから。


「…――私…っ…少し、だけ…サッカーを、好きになれたかも…、しれない」


今の自分に出来る精一杯の笑顔で誠士郎くんに笑いかける。
あぁ…こんなに感動して泣いたの、いつぶりだろう。

「…そっか」

素っ気ない言葉だけど、誠士郎くんの優しさが詰まっている気がしてとても嬉しかった。

❁︎

「ごめんね…急に泣いちゃって」

「全然大丈夫です!」

私の謝罪に玲王さんはニカッと笑ってくれた。
今はその優しさがありがたい。

「誠士郎くんもごめんね。サッカー、止めちゃって」

「それは全然いい」

即答する誠士郎くんに玲王さんが「即答すんな!」とチョップする。

「ふふっ…」

そんな二人を見て思わず笑ってしまった。

「A…」

誠士郎くんと玲王さんが目をまん丸にしてパチクリと瞬きする。そうかと思えば、誠士郎くんは急に微笑んだ。

「よかった。やっと笑顔になった」

「…え?」

「今日、ずっと浮かない顔してたから」

誠士郎くんはそう言って、ホッとしたように笑った。

「…ごめんね、心配かけちゃってたね」

「…Aはさぁ――」

「?」

誠士郎くんが急に片手をあげた。

ポスっ

「へっ」

私の頭の上に重みがのる。
私…誠士郎くんに撫でられてる?

「…もっと、人に甘えた方がいいよ。俺みたいに」

あれ…おかしいな…。
いつもだったら、「誠士郎くん、甘えてる自覚あったんだね」くらいの軽口、言えるのに。
……誠士郎くんの、目が、声が、表情が――。

――――――優しくて、目が離せなくて。

「…〜っ!」

「A?」

やばい、今の私…絶対、顔真っ赤…ッ!!
誠士郎くん…ず、ズルすぎる……ッ!!

53.知らない気持ちの話→←51.嫌いになれなかった話・後編



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(プロフ) - めんちさん» めんちさん、コメントありがとうございます!私もまだまだですので、一緒に頑張りましょ!💪 (6月26日 20時) (レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
めんち - めっちゃ面白いです!私も夢小説かいてるんですけど国語力なさすぎるので湊様みたいに楽しいお話つくりたいです (6月26日 14時) (レス) id: 05dd0f2a4d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2023年6月26日 9時

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