73.糸師冴の話・後編 ページ26
……冴が、私のことを、好き？
本人の口から聞いても信じられなかった。
それでも、冴が今も私を優しく見つめているのには変わりない。その瞳が全てを物語っていた。
「……冴は私のどこが好き、なの？」
自分の口から出た、想像するよりずっと冷たい声に驚く。
「……小さいころ、よく3人で公園行ってたこと…覚えてるか」
部屋に響く低い声にこくりと頷く。
「……あの公園で無邪気に笑ってるお前が好きだった。…姉ちゃんだからって、俺たちの手ぇ握って前に進む姿が好きだった」
その後も冴は口元を緩ませて、私の好きなところをずっと語り続けた。
「……………そっ、か」
自分から冴に聞いたくせに感情のこもっていない声が口から出ていく。
…私は、冴にどう答えるのが正解なのだろうか。
凛のときみたく、私には想い人がいることを素直に話す？……いや、それは最終手段だ。
もし、そのことを言ってしまえば凛のように私が冴を壊してしまうかもしれない。
…………じゃあ、私は一体どうすれば――――。
「…………A」
「…………俺はお前のことが好きだ。子供の頃からずっと好きだった。……けど、もう諦めはついてる」
「…………――――――俺を振れ」
「……さ、え」
「……あぁ」
震えた声で彼の名前を呼ぶ。
冴は泣きそうな顔で私を見つめる。
「…………………………ごめ、なさい」
キュッと拳を握りしめて冴に頭を下げた。
「…………なぁ、A。最後に聞かせてくれ」
頭の上からふってくる震えた声に少しだけ頭をあげる。
……冴は翡翠の瞳を震わせて――呟いた。
「………………凛も、お前に告白したのか」
「………………うん。……でも、お断り、した」
そう言うと、冴は「……そうか」と呟いて席を立った。
「…………もう、行くの？」
「…………あぁ」
冴は部屋の扉に手をかけて――こちらに振り返った。
「…………じゃあな、姉ちゃん」
「…………うん。またね、冴」
❁
冴がいなくなった小部屋で、ひとり考える。
今後、私はどうすればいいのか。
冴とはきっと、これからも姉と弟という形で上手くやれるだろう。
――…だったら、凛は？
凛とはきっと、もう姉と弟の関係ではいられない。
だったら、今の私と凛の関係にはどんな名前がつくの？
何かを選ぶには何かを犠牲にするしかない――。
……それなのに、私の心には凛の存在が深く根付いてる。
こんな私に誠士郎くんに気持ちを伝える権利なんて、あるのだろうか。
続く (更新停止中)
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湊(プロフ) - めんちさん» めんちさん、コメントありがとうございます！私もまだまだですので、一緒に頑張りましょ！💪 (6月26日 20時) (
レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
めんち - めっちゃ面白いです！私も夢小説かいてるんですけど国語力なさすぎるので湊様みたいに楽しいお話つくりたいです (6月26日 14時) (レス) id: 05dd0f2a4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湊 | 作成日時：2023年6月26日 9時
