71.全てを伝える話・後編 ページ24
「A、好きだ…ッ。ずっと…一生、俺だけを見てくれ…ッ」
耳元でささやかれる愛の言葉。
大好きで、最愛の弟。これまでもずっと大事にしてきた。
「り、ん…………」
きっと、前までの私なら凛の言葉に頷いてた。
『…Aはさぁ――』
『…もっと、人に甘えた方がいいよ。俺みたいに』
だけど、今の私は彼の優しさを知ってしまったから。
もう、凛の言葉に頷くことは出来ない。
「…………ごめ、んなさい」
私の口から出た声は、とても小さくて凛に届いたかも分からない。………だけど。
「は………………………」
今目の前で目をかっぴらいている弟を見るに、その言葉は届いたのだろう。
「……………………私、好きな人ができた」
もう一度、同じ言葉を凛に伝える。
「……その人には、もう告白もした。好きって、伝えたの」
「………………付き、合ってんのか」
凛の言葉に私は首を横に振る。
「……凛と、それから冴にもこのことを伝えてから彼の返事を聞くって彼には伝えてある」
冴の名前を出した途端、顔を歪める凛。
そんな凛に構わず、私は話を続けていく。
「……私は彼が――誠士郎くんのことが本気で好きなの。…だから、凛の気持ちには応えられない」
夏祭りに誠士郎くんに告白した。
好きだって、自分の気持ちを伝えた。
だけど、彼の返事は聞かなかった。……その前に、凛と冴に伝えないといけないって思ったから。
「…………」
凛は一度、口を開いてから――言葉を飲み込んだように口を閉じた。
「…………………そう、かよ」
「…うん」
凛のか細い声に頷く。
「…………………………結局、お前もアイツと一緒だ」
「…………」
凛の言葉に何も返すことが出来ない。
「………………結局、俺なんか最初から眼中に無かったんだろ。勝手に人の人生かき乱して…勝手にどっか行くんだ」
凛のその言葉は私にも――冴にも、当てはまる言葉なのだろう。
私は黙って凛の言葉を聞き続ける。
「…………………………もう、話しかけてくんな」
「っ………………」
冷たくて、寂しそうな声。
凛は階段へと足を進めて部屋へと戻っていく。
「………………あぁ…」
全身から力が抜けて膝をついて、崩れ落ちる。
「あぁ……っ…………ごめん、ごめんね…っ」
あぁ、もう凛と笑い合うことなんて出来ないんだ。
自分の言葉で、行動で私が凛を、この関係を壊した。
「…………………………ごめんなさい、凛」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 352人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
湊(プロフ) - めんちさん» めんちさん、コメントありがとうございます！私もまだまだですので、一緒に頑張りましょ！💪 (6月26日 20時) (
レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
めんち - めっちゃ面白いです！私も夢小説かいてるんですけど国語力なさすぎるので湊様みたいに楽しいお話つくりたいです (6月26日 14時) (レス) id: 05dd0f2a4d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：湊 | 作成日時：2023年6月26日 9時
