50.嫌いになれなかった話・前編 ページ3
「……誠士郎くんもサッカーしてたんだね」
玲王さん御用達のサッカー場へ行く道のりで誠士郎くんに話しかける。
誠士郎くんは「ふわぁ」と欠伸をしてから、頷いた。
「…玲王に強引にやらされてる」
「そう、なんだ」
あの無気力な誠士郎くんを動かす玲王さんはすごい人なんだろうな。
「…ねぇ、A――」
誠士郎くんが口を開きかけた瞬間、玲王さんの明るい声が響いた。
「ここです！糸師さん！」
「あ、ここ……」
…すごい。めちゃめちゃ広い。
辺りを見回すと、一面の芝生とサッカーゴール。
「……玲王さんってほんとにお金持ちだったんだ…」
「ははっ。信じてませんでした？」
「あっ、ご、ごめんね。信じてなかったわけではないんだけど…」
こんなに広いサッカー場に小さい人間が三人。
…いや、誠士郎くんも玲王さんも大きい人間かな。
「…誠士郎くんって何センチあるの？」
ふと、気になったことを問うてみる。
誠士郎くんは玲王さんの背中に全体重を預けながら小さく呟いた。
「…あー……190センチ…くらいだった気が…」
「ひゃ、190……」
そんなに高い子、同級生でもなかなかいない。
私はすごい人と知り合ってしまったんだ…。
「じゃあ、凪！とりあえず一本目いくぞ！」
「えー…ほんとにやるの？」
「やるの！ほら、いくぞ！」
ウダウダ言っている誠士郎くんを背中にのせてサッカー場の中心へと一直線に走る玲王さん。
「…大きい子供が大きい子供を背負っている……」
こんなの初めて見たよ。
「よーし！んじゃ、いくぞー！」
玲王さんの大きな声を合図に、誠士郎くんは玲王さんへとパスした。
「…誠士郎くん、ちゃんとサッカー出来るんだ」
芝生の上を走る誠士郎くんを見ながら、そんなことを呟いた。
「……サッカー…か」
楽しそうにボールを蹴る玲王さんと重なるのは、小さい頃の冴と凛。
「…やっぱり、私はサッカーは――…」
『冴はサッカーに行ってるわ。凛もそれについて行ったんじゃないかしら？Aも見に行く？』
『……みにいかない。サッカーきらい』
あの時も。
『凛、今日も練習？』
『うん。俺ももっと練習しないといけないから。世界で二番目に強いストライカーになるために』
あの時も。
『私は…冴と凛に、サッカーじゃなくて私を見てほしくて……ッ…』
あの時も。
私は、ずっとサッカーが嫌いだった。
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湊(プロフ) - めんちさん» めんちさん、コメントありがとうございます！私もまだまだですので、一緒に頑張りましょ！💪 (6月26日 20時) (
レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
めんち - めっちゃ面白いです！私も夢小説かいてるんですけど国語力なさすぎるので湊様みたいに楽しいお話つくりたいです (6月26日 14時) (レス) id: 05dd0f2a4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湊 | 作成日時：2023年6月26日 9時
