67.糸師家の姉ちゃんの話・中編 ページ20
「――お願いだから、もう無理しないでくれ……ッ」
一息でそこまで言った凛はもう一度、私をまっすぐに見つめる。
凛の瞳から目を逸らせずに私も自分の思いを吐露した。
「ゎ、わた…し……はっ……」
「……才能が、ないから…っ。冴と凛みたいに誰にも誇れるものがない…っ。それじゃあダメでしょ…！だって、私は冴と凛のお姉ちゃんだから…っ！全然、私は凛達の見本になってない…！！こんな何も無い私のどこを見習えって言うのよっ…！！」
はぁはぁ、と肩を揺らす。
自分の心の底に閉じ込めていたものがどんどん溢れてくる。
「……なんでそんなに自分のことを卑下するんだよ…っ。姉ちゃんはもう十分頑張っただろ…っ。なんでそんなに無理しようとすんだよ…っ」
ポツリ、と凛の声が聞こえた。
――…なん、で？
「…っ……そんなの…っ……」
「……姉ちゃん…？」
もう、ダメだ。
ブレーキがかからない。こんなこと言ったら、本当にお姉ちゃん失格になる。
でも、もう口が開いた。声が出てしまった。
「ッ……私は…冴と凛に、サッカーじゃなくて私を見てほしくて……ッ…」
ポツリ、と零した言ってはいけなかった本音。
お姉ちゃんが感じちゃダメな気持ち。
怖くて上を向けない。
凛がどんな顔をしているなんて、知りたくない。見たくない。
もし、顔を上げたら頬を叩かれてしまうかもしれない。
お前なんて姉じゃない、って言われてしまうかもしれない。
……私は、臆病者だ。
凛と冴に見て欲しくて、ずっと努力してきたのに。
いざ、本音を彼に話したら下を向いて逃げている。
68.糸師家の姉ちゃんの話・後編→←66.糸師家の姉ちゃんの話・前編
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 352人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
湊(プロフ) - めんちさん» めんちさん、コメントありがとうございます！私もまだまだですので、一緒に頑張りましょ！💪 (6月26日 20時) (
レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
めんち - めっちゃ面白いです！私も夢小説かいてるんですけど国語力なさすぎるので湊様みたいに楽しいお話つくりたいです (6月26日 14時) (レス) id: 05dd0f2a4d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：湊 | 作成日時：2023年6月26日 9時
