59.中学の体育祭の話 ページ12
校庭に響き渡るファンファーレ。
皆がうずうずとしながら、校長の長話を聞いている。
もちろん、それは私も例外では無い。
❁︎
「ねぇ、糸師さん！この後の借り物競争、冴くんが出るんだよね！？」
私の肩をグワングワンと揺らしながら友達が訴えかけてくる。
「そうだよ…。肩揺らすのやめてぇ…」
私の訴えを聞いてか、友達は私の肩から手を離してどこかへと行ってしまった。
視界がユラユラしていたのが、段々と治ってきてため息をつく。今朝からずっとこうだ。皆、弟の冴の活躍が見たいのか私を訪ねてくる。
「……私は別に冴の彼女でもないんだけどなぁ…」
苦笑を混じえて、小言をこぼす。
それと同時に放送委員の生徒のアナウンスが響き渡った。
「お疲れ。A」
「お疲れ…」
友達と話しながら、横目に借り物競争を見つめる。
「…あ、冴」
赤髪を揺らして、冴がお題の紙を取りに行っていた。
冴のその紙を一度、見つめると真っ先にどこかへ走っていった。
「弟くんに選ばれるとか羨ましいね〜。今日、皆 弟くんに選ばれるためにめちゃくちゃ物 持ち寄ってたよ」
「そこまでして選ばれたいんだ…」
冴ってすごい人気なんだなぁ。
弟の人気ぶりに感心していると、友達が「えっ」と隣で驚きの声を漏らした。
「…？どうしたの――」
「――姉ちゃん、借りに来た」
さっきまで遠くにいた冴がいつの間にか私の目の前に立っていた。冴は私の返事など聞かずに、私の手を取って一直線にゴールへと走っていく。
「ちょっ…何のお題なの…っ？」
「教えねぇ。黙ってついてこい」
「えぇー…」
相変わらずの弟にため息を零す。
冴はどんどんスピードを上げていって、やがて1位でゴールした。
「はぁ…っ…はぁ…っ…」
まさか、私が選ばれるとは思わなかった。
肩を呼吸をしながら冴を見上げる。
冴は汗ひとつかいていない無表情で私を見下ろしていた。
「…急に引っ張って悪かった」
「う、うん…」
珍しく冴が謝るもんだからびっくりした。
「…そういえば、結局お題はなんだったの？」
首を小さく傾げて冴に問う。
冴は腕を組んで、「フン」と鼻を鳴らした。
「……�狢臉擇覆發劉瓠�
彼の意味する大切なものが、どういう意味だったのか今の私にもよく分からない。
家族愛なのか、はたまた――。
「…そっか」
それでも、私を大切に思ってくれていた事実が嬉しかった。冴もその時は珍しく笑っていた気がする。
――糸師A、14歳。糸師冴、13歳の話である。
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湊(プロフ) - めんちさん» めんちさん、コメントありがとうございます！私もまだまだですので、一緒に頑張りましょ！💪 (6月26日 20時) (
レス) id: 8e39c25e39 (このIDを非表示/違反報告)
めんち - めっちゃ面白いです！私も夢小説かいてるんですけど国語力なさすぎるので湊様みたいに楽しいお話つくりたいです (6月26日 14時) (レス) id: 05dd0f2a4d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：湊 | 作成日時：2023年6月26日 9時
