第6話 「ゾッとするよ」 ページ6
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「気になっていたんだが」
ひとり思考に走っていた幸村を聞き慣れた柳の硬直したような声が呼び戻す。窓から見える桜は完全に散って、新緑が木々を覆っていた。
「いつから精市を見ていた？」
柳は続けて「それは、何故？」と捲し立てるような、どちらかと言えば事情聴取に近い形でAに質問を投げかける。
好奇心は猫をも殺すとはよく言ったものだが、この好奇心は誰の身を滅ぼすものなのか。確かにそれは幸村自身も気になっていた事であった。マンモス校と称されるほど生徒が多い立海では知っている顔より知らない顔の方が多い。これだけ目立つ容姿をしている彼女でさえも、自分に視線が向いていなければ彼女という存在を知らないまま卒業していたのだろうか。少しだけゾッとする。
Aは悩んだ素振りもせずに幸村に視線を移した。彼女の短く息を吸う音が教室に響いた気がして思わず息を飲んだ。
「気付いたら好きになってました」
てか好きになるのに理由って必要ですか？と先輩である2人を小馬鹿にするように笑ったAに不思議と怒りは湧かなかった。呆気に取られるとはこの事か、と幸村は思った。彼女は好きだとかそういう類の告白を蔑ろにするというか、重視しない傾向にある。幸村も、そして柳もあっけからんと言い切ったAを見つめるしかなかった。
「あの、私もネクタイキスしたいんですけど」
「誤解を招く発言は控えろ」
「イチイチ何ですか柳先輩！」
「私も、ではないだろう。俺は精市のネクタイを引っ張ったが断じてキスをしようとした訳ではない。お前の発言は誤解を招く」
「細かすぎる…言葉の綾って知らないの…」
じゃじゃ馬のように柳に突っかかるAを見て無邪気で可愛らしい癖毛の青年を思い出した。彼女に対する謎の既視感はきっと俺達が将来を託すだろうあの後輩に似ているからだろうか。
柳に向いていた視線が幸村に向けられ、幸村は瞬時に構えたがAから特に言葉が向けられることはなくただ見つめられるだけだった。「手紙」聞こえるか聞こえないかくらいの声で呟いた彼女は熱を吸収するコンクリートを見つめていた。
「気になるかい？」
性悪と呼ばれても反論できない反応をした自覚はあるし謝れと言われたら謝る程度には悪気がある。それでも、突拍子のない事を言い出したり、人のパーソナルスペースに土足で乗り込んでくる彼女が下を向いて呟いた言葉を逃すわけにはいかなかった。
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福原(プロフ) - ゆきもりさん» コメントありがとうございます❤︎そう言っていただけて光栄です(;_;)緩くではありますがぜひお付き合い下さい❤︎ (2022年7月29日 11時) (
レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきもり(プロフ) - 第1話から心奪われました...恋が始まる予感....更新楽しみにしています^^ (2022年7月28日 14時) (レス) @page3 id: 1e05fd341a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：福原 | 作成日時：2022年7月28日 14時
