第34話 「ほらお姫様」 ページ34
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彼女は光だ。光だからこそ、そこに理由があったとしても片っ端から正当ではない理由を見つけ出すつもりだった。でも、本当に見つけ出せなかった。彼女に絆されたのは俺だった。
好奇心は猫をも殺すとはよく言ったもので、好奇心に身を滅ぼしたのは間違いなく俺だった。代償を払ってでも彼女に手を伸ばしたいと思ってしまった。彼女の未来を奪う事は許されない？それなら俺は神の裁きを受けよう。彼女に手を伸ばすことが許されるなら何もかも甘んじて受け入れよう。もし彼女が俺の手を取らなくたって構わない。一寸先が闇でも彼女がいるのなら----
カフェテリアの扉が開く音が聞こえる。彼女の軽快な足音が通さがる。進むべき道はもう決まっている。
「A！」
扉を挟んで向かい合う2人の間に風が通り抜ける。彼女は風に攫われてしまいそうなくらい儚く美しい。俺を映し出す彼女の瞳はたた純真な光を灯していて、俺には眩しすぎる。それでも俺は彼女に手を伸ばして、俺はきっと彼女の瞳に焼かれてしまいたくなるんだ。
「えっ幸村先輩えっなまえ」
「A」
カフェテリアから一歩踏み出した幸村がAの腕を掴む。相変わらずの細い腕が消えてしまわないように、自分の持てるありったけの優しさを込めて。
「はっはい」
随分風が冷たくなったみたいだ。見飽きたはずの深緑のジャケットも彼女が着るだけで新鮮でどこか真新しいものみたいに輝いて見えた。
「1度しか言わないよ」
「録音しなきゃ」
「コラ」
彼女の腕から手を離し、彼女の右手を握る。俺よりも小さく滑らかな手。どうか俺の手を取ってくれないか。
「A、ラストダンスは俺と踊ってくれないか」
Aが細く息を吸った。ヒュ、となった喉元に気を回してやれるほどAに余裕は無かった。全面ガラス張りのこの建物から見える幸村達の様子に気付く生徒は誰一人いなかった。
「しょ、正気ですか」
「俺が正気じゃないとでも？」
Aは握られたままの右手にも気付かず、目の前の男を見上げた。カフェテリアの扉から差す光が眩しくてAは思わず目を細めた。
「嬉しすぎて今日が命日かと」
「君は命が何個あっても足りないね」
彼女の瞳が赤く染まる。大きな瞳に涙が溜まっていく。
「ほらお姫様、俺の手を取って」
幸村の乾燥した骨ばった手に、滑らかで細い手が重なる。風の冷たさに震える日でも、彼女がいれば大丈夫だってそう思えた。
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続く (更新停止中)
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福原(プロフ) - ゆきもりさん» コメントありがとうございます❤︎そう言っていただけて光栄です(;_;)緩くではありますがぜひお付き合い下さい❤︎ (2022年7月29日 11時) (
レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきもり(プロフ) - 第1話から心奪われました...恋が始まる予感....更新楽しみにしています^^ (2022年7月28日 14時) (レス) @page3 id: 1e05fd341a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：福原 | 作成日時：2022年7月28日 14時
