第29話 「サッカー部の佐藤くん」 ページ29
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「最近太ったんですよね」
そう言いながら鮭おにぎりを頬張る彼女にパラドックスを感じる。小さな口でおにぎりを咀嚼する彼女はまるでリスだ。
「どこがだい」
出会った頃から変わらない、むしろ最近痩せたような彼女を見ながら俺は必死に食事制限をする妹を思い出していた。
今までほぼ毎日と言っては語弊があるが、昼食を共にしていくうちに彼女は少食で食事自体に興味が無いように想えた。昼食をのメニューもおにぎりとアイスココアと基本的に毎日代わり映えがなく、どことなく食事を単純に栄養補給の機会だと思っている節がある。食事を楽しむ物として捉えている丸井が聞いたら驚くだろうななんて思った。
そうは見えないがな、と今日も豪勢なお弁当を食べながら呟く柳を恨めしそうに見るAを見て幸村は口角を上げた。
そんないつもと変わらない穏やかな空間にノック音が響いた。扉の向こうから聞こえる生徒の声に柳が「委員会か」とどこか腑に落ちない表情のまま立ち上がった。
「あ、Aいますか？」
背の高い柳を見て一瞬固まった女子生徒だったが、柳の背景にAを見つけ軽く会釈した。彼女への対応と来客用のスリッパを見る限り来客が彼女と同級生であり彼女目当てであることは明白であった。
彼女も心当たりがあったのか「あ！」と声を漏らしながら食べ途中であったおにぎりを急いで口に放り込んだ。胸におにぎりを詰まらせる彼女を見ながら俺は彼女の手前に置いたままのアイスココアを手渡した。咳き込みながら俺にお礼を告げた彼女が扉の方へ向かった。
「え委員会だっけ？」
「違う違う、ほら、サッカー部の佐藤くんが」
冷やかしが含まれた表情を浮かべながらAに笑いかける女子生徒を見て、Aは思わず溜息をついた。胸の前で腕を組みながら心底面倒だという雰囲気を包み隠さない彼女が珍しい。そんな後輩の様子を見ながら、柳は1人納得したような表情を浮かべていた。
「私断ったよね？…まさか」
「ちょっと！冤罪！」
「バカ！前科ありじゃない！」
後輩が昼休みに、それもわざわざ距離のある第三校舎に足を向ける時点で相当緊急性のある事なのだろうと幸村はプラスに結論づける。そりゃこれだけ人から注目される学生生活を送ってきたのだ、もう察しはついている。
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福原(プロフ) - ゆきもりさん» コメントありがとうございます❤︎そう言っていただけて光栄です(;_;)緩くではありますがぜひお付き合い下さい❤︎ (2022年7月29日 11時) (
レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきもり(プロフ) - 第1話から心奪われました...恋が始まる予感....更新楽しみにしています^^ (2022年7月28日 14時) (レス) @page3 id: 1e05fd341a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：福原 | 作成日時：2022年7月28日 14時
