第23話 「ご褒美だよ」 ページ23
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体育祭実行委員の担当教師と委員長により午前中の反省や改善点、午後に向けての配置確認など競技終わりにおける中々なブラック会議を終えAは友人達の待つ教室へ足を向けた。Aのライフは0に近い。
人っ子一人いないグラウンドを通り抜け3年生がお昼ご飯を楽しんでいるであろう第三校舎を横目に脱力感を表出させながら歩いていると、背後から名前を呼ばれAは足を止めた。
「柳せんぱ」
聞き馴染みのある声に肩を落としながら振り向くと、柳の半歩後ろに首にタオルをかけて微笑む幸村が目に入り、Aは思わず舌を噛みそうになった。
「せ、先輩たちどうしたんですか」
お昼ご飯のはずじゃ、と続けようとしたが幸村の右手に収まるアイスココアを見つけてAは今度こそ舌を噛んだ。
「よく頑張ってた君にご褒美だよ」
そう言って幸村がアイスココアを揺らしながらAに近付く。
いつも赤く色付いている彼女の唇は今日は血色が無く少しだけ乾燥しているようだった。白く陶器のような頬も実行委員として日差しの中校庭を走り回っていたからか少し赤い。いつもの完璧で文句の付けようのない彼女ではないのも彼女が頑張った証であった。
彼女が何をすれば喜ぶのか、彼女が何をしたら安らげるのか、無知な俺には難しくて、彼女が一番好きだと言っていたアイスココアで少しでも安らげればと思った。アイスココアを華奢な両手に収め、ぽかんとした顔で俺を見上げる彼女が隙だらけで思わず笑った。
「午後も暑いから気を付けて。君の頑張りは俺が見てるよ」
彼女の両手に行儀よく収まるアイスココアを見てから乱れたままの砂っぽい彼女の前髪を直す。慣れない実行委員の仕事にも泣き言を言わずに真摯に取り組み、やり遂げた彼女の頑張りは俺がよく知っている。よく頑張ったね、午後も暑いから気を付けるんだよ。人差し指で触れた前髪は水のように流れて元あったらしい場所に収まった。艶やかな黒髪が眩しい。
「精市」
「あぁ」
柳の声でAと精市の時間が動き出す。
軽い挨拶を交わして第三校舎へと消えていく背中を見ながらAは動けずにいた。息をするのも忘れてしまうような甘く穏やかな空気から現実に引き戻されたAは目を白黒させながらどうにか今起きた出来事を咀嚼しようと思考をフル回転させていた。Aの手元に残るアイスココアの冷たさが夢ではないことを示していた。
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福原(プロフ) - ゆきもりさん» コメントありがとうございます❤︎そう言っていただけて光栄です(;_;)緩くではありますがぜひお付き合い下さい❤︎ (2022年7月29日 11時) (
レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきもり(プロフ) - 第1話から心奪われました...恋が始まる予感....更新楽しみにしています^^ (2022年7月28日 14時) (レス) @page3 id: 1e05fd341a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：福原 | 作成日時：2022年7月28日 14時
