第16話 「祈ってたんだよ」 ページ16
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幸村が濡れたアイスココアを手に取る。
あの夏から一度もこの日を忘れたことは無かった。
夏が来ると思い出すくらい脳裏に張り付いて離れなかった。プシュと決戦の場とは不釣り合いな音を鳴らしたアイスココアを1口飲む。枯渇していた喉に脳に全身に鉛のような甘みが行き渡る。美味しいよ、笑っちゃうくらい。さあ、試合はまだ始まったばかりだ。
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無事表彰式を終えた幸村達は言葉を発することなく、夕日を背にただ真っ直ぐ道を歩いていた。夕日に染まる駅までの一本道は残酷なくらい美しくてこのまま時間が止まってしまっても悔いはないと幸村は思った。背筋に微かに汗が滲むのを確かに感じた。喉元に残る甘い塊が夏の終わりを告げているようだった。
「精市」
凛とした落ち着いた柳の声が沈黙を破る。テニスシューズに残る決戦の跡がコンクリートに染みを作っていく。時折音を立てる足音が泣き声のように聞こえた。柳の唇が紡ぐであろう言葉は幸村には分かりきったことであった。
そして、柳がそれを幸村に問いかけなくとも答えを知っていることにも、幸村は気付いていた。 なぜ？と問われてなんて答えればいいかなんて悩む事さえ虚しく、悩んだってどうせ答えは出ているのだ。恋だの愛だの脳が認知してからは早いもので、いくら人類愛だの言葉を並べようとも自分の抱く感情が自分に向けられる感情と似ていることに薄ら吐き気がした。感情と言語をコミュニケーションの類として使う人間に生まれたからには、結局は至極単純で面倒な感情に従うしかないのだ。
「…祈ってたんだよ」
俺は----
「女神に祈ってたんだよ。俺達を栄光に導いてくれってね」
夏よ、もう少しだけ。
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福原(プロフ) - ゆきもりさん» コメントありがとうございます❤︎そう言っていただけて光栄です(;_;)緩くではありますがぜひお付き合い下さい❤︎ (2022年7月29日 11時) (
レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきもり(プロフ) - 第1話から心奪われました...恋が始まる予感....更新楽しみにしています^^ (2022年7月28日 14時) (レス) @page3 id: 1e05fd341a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：福原 | 作成日時：2022年7月28日 14時
