第14話 「知らなかったんですか？」 ページ14
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これでは、まるで反抗期の子供だ。
周りに当たっている事も、彼女が勘づいていた事も分かっていた。俺はまだ子供で、自分の中での苛立ちを解消する方法が分からなかった。そんな俺を見放さず校舎内を走り回り俺を探していただろう彼女の方が断然に大人だ。俺は、馬鹿な男だ。
「君は勝利の女神か何か？」
「知らなかったんですか？私は幸村先輩の女神なんですよ」
何回か折られた長袖のワイシャツから覗く白く細い腕を胸の前で組んだ彼女が自信ありげに口角を上げた。慈愛にも似た表情で幸村を見つめるAに幸村は霧が晴れていくような気になった。
「はは、君って子は。…本当に、ああ、調子狂うよ」
反抗期の子供みたいに殻に閉じこもり、本当は彼女がどんな行動を取るか分かっていた俺を彼女はどう思うのだろう。彼女が昼食に持参するアイスココア。そういえばアイスココアが1番好きだと言っていたね。
「ありがとう」
目尻を下げて真っ直ぐ感謝の言葉を告げた幸村にAは言葉を失った。勿論今まで感謝されるような事をした覚えはないが、幸村に感謝を告げられたのは初めてであった。どこか現実味のない言葉にAは嬉しいのか恥ずかしいのか自分の感情が分からなくなった。思い通りにいかない表情筋が恨めしい。遠くで最終下校の号令が聞こえる。言葉のない教室で先に動いたのはAであった。
「じゃあ幸村先輩！良い夏休みを！今日も大好きです！」
「ふふっ、あぁ君もね」
数分前まで深刻そうな顔を浮かべていたとは思えない彼女の通常通りの発言に幸村は笑うしかなかった。幸村の愉快そうな笑い声を背に受けたAが扉の前で足を止めた。
「…本当に好きですから、幸村先輩」
一瞬、真剣な眼差しを向けるAに幸村の背筋が伸びる。美人の真顔は怖い、とよく言われる理由に改めて納得する。息をするのも忘れてしまうような彼女の真顔は冷徹さを秘めていて非現実的だった。
彼女のスカートが扉からの隙間風に揺れる。それが合図かのようにAは眩しいくらいの笑顔を浮かべた。
顔の前で右手を軽く上げたAに幸村もそれに応えるように右手を軽く振り、Aが教室を去るのを見送る。彼女の長い髪の毛が揺れるのを目にしてから幸村は指先を濡らすアイスココアを見つめた。
プシュ、と軽く音を立てたアイスココアを口に運ぶ。
口にした彼女が好きそうな甘さのアイスココアは、自分には甘すぎて鼻の奥ガツンとした。
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福原(プロフ) - ゆきもりさん» コメントありがとうございます❤︎そう言っていただけて光栄です(;_;)緩くではありますがぜひお付き合い下さい❤︎ (2022年7月29日 11時) (
レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきもり(プロフ) - 第1話から心奪われました...恋が始まる予感....更新楽しみにしています^^ (2022年7月28日 14時) (レス) @page3 id: 1e05fd341a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：福原 | 作成日時：2022年7月28日 14時
