君という季節【越前リョーマ】

第28話 ページ28

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教室に向かう足を早めたAは自分のあまりにも子供じみた行為に頭を抱えていた。なぜ、と考えてみても理由が見当たらずに苦しんでいたのも事実だったのだが。



予鈴まであと5分、学生たちは足早に教室へと向かっていた。



よく考えてみたら、越前はAにとってただの後輩だった。それ以上でもそれ以下でもない、校内で会えば会釈をして、時には冗談を言い合って。それは校外でも変わらなかったはずだ。


なぜ今になって、こんなにも。









Aは、越前を見つめる彼女の瞳を思い出した。


懸想の痛みを甘んじて受け入れた彼女の情に満ち溢れた瞳にAの矜持が傷付けられたような気がした。

いつまでもあの夏を彷徨する自分が惨めに思えて、吐き気がした。独りよがりは、あまりにも惨めだ。





誰かが言っていた、恋は罪悪だと。


Aにとって憧憬を追い求めることは罪悪だったのだ。後出しは卑怯だと分かっているように。





ああ、彼らもそうだったのか。

罪悪だったのは間違いなく私で、恋なんかじゃなかった。私は先生と一緒だった。




廊下の騒音に耳を澄ました。通り抜けた隙間風がAの火照った体を冷ましていく。



今はまだ何も知りたくなかった。




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