第15話 ページ15
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終業式に寝坊したことがもう懐かしい。冷房が涼しくて寝てしまいそうだった。
蝉の鳴き声が窓ガラスの向こうから聞こえる昼下がり、担任から明暗を分ける成績表が渡された。
担任の話を右から左に聞き流していたAの胸ポケットが揺れた気がした。
ホームルームが終わり、椅子を引く音が教室に響いた。友人と歩く廊下はごった返す生徒達たちの熱気で溢れていた。
無事に下駄箱まで辿り着いたAは昨日より重くなった学校指定の鞄を鬱陶しく思いながら上履きを袋に入れた。
「わっ」
生徒で溢れていたのは下駄箱も同じだった。Aは背後からの重みに耐えられなかった。
デジャブを感じる人の圧に嫌気がさした。危ない、倒れる。
「A先輩、大丈夫？」
おっと、と言って目の前の男はいなすようにAを受け止めた。
「越前くん」
デジャブを感じていたのは私だけではなかった。彼はAの肩を支えたまま、「いつも俺が支えてる」と短く笑った。
越前はこれから部活なのだろう、肩に大きなラケットバックを背負っていた。
Aより背丈は大きいのに、どこか頼りない華奢な肩。彼はどれだけの重みを背負っているのだろうか。
人混みに紛れるAたちを見る者はいなかった。
「ありがとう越前くん」
肩に触れている越前の温もりから離れる。暑さが増した気がした。
「ねぇ、連絡したんだけど」
「え？」
あぁ、とAは1人納得した。ホームルームの時に感じた振動は間違いではなかった。確認を怠った自分を少しだけ悔やんだ。
「ごめん、それでどうしたの？」
Aは申し訳なさそうな顔を作って越前を見上げた。Aに反してどこか納得していない様子の越前は「ふぅん」と呟いた。
あ、下駄箱が空いてきた。
言葉の続きを発さない越前に痺れを切らしたAは、じゃあね、と告げて一歩踏み出そうとした。
「待って」
右腕を掴まれた。あぁ、またか。また、この熱だ。
「あのさ」
だめだよ、越前くん。私は私を嫌いになりたくなかった。
「A？あれ」
ごめん取り込み中だった？と悪戯な視線を向けた友人にAは素直に助かったと思った。越前の腕から離れた。
もう一度振り返ってAは「またね」と微笑んだ。振り返らずに友人に駆け寄った。
そしてもう一度振り返って見せた。
「あ、良い夏休みを！」
大きく手を振ったAに越前はぎこちなく微笑んでいた。
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福原(プロフ) - ぱーぷる姫さん» ありがとうございます❤︎ぱーぷる姫さんにそう言っていただけて光栄です( X_X ) (2月24日 1時) (
レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぱーぷる姫(プロフ) - 涙が溢れ出ました！あまりに綺麗で切ない表現に何度も読み返しました。ありがとうございました！ (2月18日 15時) (レス) id: 4d7ac923b9 (このIDを非表示/違反報告)
福原(プロフ) - 幸絵さん» ご感想ありがとうございます(;_;)またどこかで2人が会える日がくることを願っています、、リョーマ！失恋組！初遭遇です！やはり初恋は実らないものですね、、 (2021年11月10日 9時) (レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
幸絵(プロフ) - 完結おめでとうございます！ついついヒロインの先輩と結ばれて欲しい〜って思ってしまいました。話は変わりますが、『劇場版リョーマ！』私も失恋した気分になりました！ (2021年11月10日 6時) (レス) id: 4696a5fece (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：福原 | 作成日時：2021年9月17日 0時
