第13話 ページ13
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鐘の音が静まり返った教室に虚しく響く。
「はい終了、後ろの人から回収してくれ」
教師のその一言を皮切りにAを含めた生徒達が言葉を発し始めた。テストからの開放感を感じる生徒、片やテストの出来に落胆する生徒、夏休みが始まることへの喜びを表現する生徒。個性豊かなクラスだった。
「Aおつかれ!夏休みだぁ」
運動部に所属する友人は春よりも焼けた頬を綻ばせながらAの前の席に座った。
彼女にとっては最後の夏、気合が入っているようだった。部長として部活をまとめる彼女が、どこか大人びて見えた。
あぁ眩しいな、と思った。
そんなAを不思議に思ったのか、彼女は首を傾げて笑った。
「どうしたの?」
「ううん」
変なの、と彼女はケラケラと笑い出した。
文句を言いながら3年間着続けたこの夏服も、友人の白いワイシャツから覗く小麦色の肌を見て思い出す夏の訪れも、今年で最後だと思うと、Aにはセンチメンタルなものがあった。
私立特有の19度の冷房の風がAの頬を撫でた。
「あ、菊丸だ」
彼女は菊丸の姿を見つけると大きく手を振った。それに気付いた菊丸は「お〜!」と言いながらこっちに向かってきた。
彼女と菊丸、即ち彼女とテニス部員たちは部活の活動場所が隣でよく顔を合わすらしく。
「テニス部も夏で引退?」
「そうだよん、そっちも?」
「うん。絶対トロフィー持って帰ってくる!」
ケラケラと笑っていた彼女の瞳には情熱が篭っていた。
そんな彼女を見て菊丸は頬を弛め、「俺も!」と拳を握っていた。2人は目を合して笑い出した。
そんな様子を見てAも口角を上げた。
勝てば嬉しくて、負ければ悔しい。
二度と来ない夏の日が、青春の1ページが、こんなに眩しいものだったとは。Aは思わず目を細めた。
フィールドは違えど目指す場所は同じ、仲間たちと過ごす暑い夏も悪くないなと思った。
いいなぁ、と小さく呟けば、背後からまた新しい声が聞こえた。
「僕も頑張らなきゃな」
不二!と目を輝かせた菊丸を横目に、不二はAの肩に手を置いて微笑んだ。不二とAは中学生からの付き合いで、腐れ縁と言っても過言ではなかった。
そんな不二にAは菊丸の真似をして拳を握った。私たちは目を合わせて笑った。
「みんな頑張れ!」
「おう!」
思ったよりこの3人は息が合うようだ。
他愛ない話をしながら、Aたちは日差しの照りつける廊下を歩き始めた。
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福原(プロフ) - ぱーぷる姫さん» ありがとうございます❤︎ぱーぷる姫さんにそう言っていただけて光栄です( X_X ) (2月24日 1時) (レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぱーぷる姫(プロフ) - 涙が溢れ出ました!あまりに綺麗で切ない表現に何度も読み返しました。ありがとうございました! (2月18日 15時) (レス) id: 4d7ac923b9 (このIDを非表示/違反報告)
福原(プロフ) - 幸絵さん» ご感想ありがとうございます(;_;)またどこかで2人が会える日がくることを願っています、、リョーマ!失恋組!初遭遇です!やはり初恋は実らないものですね、、 (2021年11月10日 9時) (レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
幸絵(プロフ) - 完結おめでとうございます!ついついヒロインの先輩と結ばれて欲しい〜って思ってしまいました。話は変わりますが、『劇場版リョーマ!』私も失恋した気分になりました! (2021年11月10日 6時) (レス) id: 4696a5fece (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:福原 | 作成日時:2021年9月17日 0時