第22話 ページ22
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胸元まで伸びた髪の毛が風に靡く。もうすぐ木枯らしの季節がやってくる。
「Aごめん！ちょっと待ってて！」
友人は顔の前で手を合わせて部室棟へ走り出した。夏が終わって1ヶ月が経ち、部活での引き継ぎが本格化してきたらしい。
Aは友人の帰りを待つために校庭が見渡せる図書室を選んだ。
西日に照らされる図書室を見て、Aはふとあの夏の日を思い出した。トントン、と芯の出ていないシャーペンをノートに滑らせた。
「A」
「おっ、と」
急に声をかけられて驚いた。振り向けば栗色の髪の毛が悪戯に揺れた。
「不二くん」
「隣座ってもいいかな？」
はいどうぞ、と椅子を引いてやれば不二は満足気に微笑んだ。
不二のワイシャツから覗く細腕が小麦色に焼けていた。こんな細腕でテニスができるんだな、とAはテニスの奥深さに触れた気がした。
「どうしたの？僕の腕になにかついてる？」
「いや全然、お綺麗な腕ですよ」
放課後の図書室には人っ子一人いない、Aにとっては最高の暇つぶしスポットでもあった。今日は偶然、待ちぼうけをしているわけだったが。
夕焼けに染る窓が季節の変わり目を伝えているような気がした。
昼間は汗ばむ陽気なのに、日が沈むと急に肌寒くなる。体温調節が厄介な季節になったものだ。
そういえば、誰もいない図書室に学園きっての王子様といる所を目撃されてしまったら私背後から刺されるんじゃないか。
客観的に見てもこの状況は非常にまずいように思えたAは肩を窄めた。
Aは不二から距離をとるように椅子を離した。
「誤解されたらごめん、不二くん」
課題から視線を逸らさずに先に謝罪の言葉だけを口にした。
シャーペンがノートを滑った。文字の羅列が目に痛かった。
不二はAを数秒見つめた後、肩を揺らしながら笑いだした。
「僕としては大歓迎だけどね」
毛穴ひとつ無い陶器のような肌、その肌に影を作る睫毛、麗しげな目元、真っ直ぐな鼻筋に、小さな唇。
女のAから見ても端麗な不二の顔が悪戯に微笑んだ。
「…本当に綺麗な顔してるよね、不二って」
ただ不二の綺麗な顔に見惚れるAに不二は拍子抜けしたかのように目を丸めた。
そして、小さく笑うと「君に言われてもなぁ」とAとの他人行儀な距離感を少しだけ楽しんだ。
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福原(プロフ) - ぱーぷる姫さん» ありがとうございます❤︎ぱーぷる姫さんにそう言っていただけて光栄です( X_X ) (2月24日 1時) (
レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
ぱーぷる姫(プロフ) - 涙が溢れ出ました！あまりに綺麗で切ない表現に何度も読み返しました。ありがとうございました！ (2月18日 15時) (レス) id: 4d7ac923b9 (このIDを非表示/違反報告)
福原(プロフ) - 幸絵さん» ご感想ありがとうございます(;_;)またどこかで2人が会える日がくることを願っています、、リョーマ！失恋組！初遭遇です！やはり初恋は実らないものですね、、 (2021年11月10日 9時) (レス) id: cc2ff694b3 (このIDを非表示/違反報告)
幸絵(プロフ) - 完結おめでとうございます！ついついヒロインの先輩と結ばれて欲しい〜って思ってしまいました。話は変わりますが、『劇場版リョーマ！』私も失恋した気分になりました！ (2021年11月10日 6時) (レス) id: 4696a5fece (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：福原 | 作成日時：2021年9月17日 0時
