___ ウソとホントとウソ ページ8
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『いいんです、もう。
あげたかった人は受け取ってくれないと思うから。』
初めて会った日、彼女は目の光を失くして、僕に困ったように笑ってチーズケーキを渡した。
華奢な小さな手。
少し震えているように見えて、今にも泣き出しそうな彼女を放っておけなかった。
宿舎に帰ってくる頃にはもう僕は雨のせいでびちょ濡れで、メンバー達がそんな僕を見て驚く程に。
それでも彼女から受けとった紙袋だけは濡らさないようにしっかり抱えていた。
1人でこっそり部屋で食べたそのチーズケーキは、お世辞無しに本当に美味しかった。
綺麗にラッピングされていて、開けるのも食べるのも申し訳なかったけれど数分で完食してしまうほどに。
そのまま携帯に登録された新しい番号に電話をかけようとも思ったが、なんだか勿体無いような気がした。
明日にでもかけよう、と思っていたのにスケジュールが忙しくなってしまって結局電話をかけれたのはあの日から4日後の事だった。
10分ほど発信ボタンと睨めっこをして、やっと聞こえた彼女の声はあの日の声とは打って違ってとても明るい声色だった。
名前も知らない彼女が少しでも元気なったことに安心している自分がいた。
なぜ泣いていたのかを聞いてみれば、失恋をした、と変に明るい声で言うものだから申し訳なさ過ぎて電話に向かって90度に腰を曲げて謝ってしまうほどに後悔した。
あの日貸した折り畳み傘を返したいという理由でまた彼女に会えることに。
その時の僕は何故か次の日の練習までニヤニヤしてしまう程に機嫌が良かった。
そして今、僕は美容師のマクくんになってしまった。
すごいね、と目を輝かせるAちゃんの顔は見れなかった。
だって僕は美容師じゃない。
Aちゃんにウソをついてしまった罪悪感で胸が押しつぶされそうになりなる。
でもあの日の酷く辛そうな顔とは正反対に明るく楽しそうに微笑むAちゃんを見ていれば、もうなんでもいいのかもしれないと錯覚してしまう。
『え…』
Aちゃんがいきなり外を見て驚いた顔をするから、同じように窓の外を見てみれば、
｢また雨…｣
雨が降っていた。
次第に強く窓に打ち付けられるほどに雨は酷くなっていく。
『傘ないのに。』
Aちゃんが小さくそう呟いたのを聞き逃さなかった。
僕のリュックにはさっきAちゃんが返してくれた折り畳み傘が入ってる。
一つ息を飲んだ。
｢家まで送るよ。｣
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ケロちゃん。(プロフ) - きょんさん» こちらこそありがとうございます🥹嬉しいです߹~߹ (2022年6月11日 22時) (
レス) @page19 id: 6e1f997a93 (このIDを非表示/違反報告)
きょん(プロフ) - 最高すぎます。もうにやにやとまりません！！こんな物語我得でしかないです！！ありがとうございます (2022年6月11日 15時) (レス) @page19 id: 6d9e8baccd (このIDを非表示/違反報告)
ケロちゃん。(プロフ) - alone99さん» 嬉しいコメントありがとうございます( ⸝⸝⸝ᵕ ̫ ᵕ⸝⸝⸝ ) (2022年6月3日 19時) (レス) id: 6e1f997a93 (このIDを非表示/違反報告)
alone99(プロフ) - もうすでにめちゃめちゃ好きな雰囲気のイマク出てきそうでワクワクです！応援してます！ (2022年6月3日 17時) (レス) @page4 id: 7bd05b70b6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ケロちゃん。 | 作成日時：2022年6月3日 0時
