___ アイスコーヒー ページ5
･
お疲れ様です！とそそくさとバイト先を後にして急ぐのはあの日のバス停。
18時40分。
このまま急いだら間に合う。
片手にあの折り畳み傘をギュッと握りしめて、ジトジトと肌に纏わりつく暑さの中私の急ぐ足音だけが響く。
バス停が見えたと同時に、彼の姿が遠くから見えた。
あの日と同じ黒いキャップに、白いマスク。
遠くから見たら不審者みたいだな…。
私に気づいたのか、ペコリと小さくお辞儀をした彼。
『っはぁ、お待たせしちゃいましたか？』
少し上がる息を整える。
膝に手を着いて下から覗くように彼の様子を伺えば、手を振って全然！と少し笑っていた。
『これ、ありがとうございました。』
手に持っていた折り畳み傘を彼に渡す。
｢いえ、こちらこそチーズケーキ美味しかったです！ありがとうございます！｣
深く被った帽子とマスクの間から見える目はまた優しく弧を描いていた。
『わざわざ来てもらってすいません。』
｢こちらこそ走らしてしまって…｣
彼はとても対応が柔らかい人なんだな、とつくづく思う。
そして顔はほとんど見えないのに、隙間から見える目元だけでとても表情の分かりやすい人なんだな、とも思う。
相変わらず私たちしかいないこのバス停。
この湿った空気の中、急いできたせいか肌にくっつく服が少し気持ち悪い。
もう傘も返したし、……特に話すこともない。
少しの沈黙が流れ出して、もう行こうと思い口を開けた瞬間だった。
｢あの、時間があったらそこのカフェに入りませんか？」
彼がそう言いながら向かい側の道路を指さす。
指を辿って目線を向ければ、ポツンと1軒だけ灯りのついているカフェが1つ。
｢いや！その！嫌だったらいいです！
…汗かいてるし、ジュースでもと思って！｣
彼は怪しまれたくないのか必死に目をぱちぱちさせて、少し大きくなっている声。
『ふふっ』
そんな彼の姿を見てつい、笑ってしまった。
だってあまりにも分かりやすく反応をするから。
きっとこの人は嘘とかつけない人だな。
｢初めて笑ってるとこ、見ました。｣
彼が少し目を輝かせて私を見つめる。
目をあまりにもキラキラさせながら見るものだから、また笑ってしまう。
『私だって笑いますよ。』
｢そうですよね。｣
彼もおかしくなったのか声を出して小さく笑った。
『カフェ入りましょう。喉乾いちゃったな。』
｢……はいっ！！｣
彼のことを少し、知りたくなった。
･
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 702人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ケロちゃん。(プロフ) - きょんさん» こちらこそありがとうございます🥹嬉しいです߹~߹ (2022年6月11日 22時) (
レス) @page19 id: 6e1f997a93 (このIDを非表示/違反報告)
きょん(プロフ) - 最高すぎます。もうにやにやとまりません！！こんな物語我得でしかないです！！ありがとうございます (2022年6月11日 15時) (レス) @page19 id: 6d9e8baccd (このIDを非表示/違反報告)
ケロちゃん。(プロフ) - alone99さん» 嬉しいコメントありがとうございます( ⸝⸝⸝ᵕ ̫ ᵕ⸝⸝⸝ ) (2022年6月3日 19時) (レス) id: 6e1f997a93 (このIDを非表示/違反報告)
alone99(プロフ) - もうすでにめちゃめちゃ好きな雰囲気のイマク出てきそうでワクワクです！応援してます！ (2022年6月3日 17時) (レス) @page4 id: 7bd05b70b6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ケロちゃん。 | 作成日時：2022年6月3日 0時
