相良くんとかわいいものにかこまれたい！よん【今日俺】

気づけば君で頭がいっぱい ページ46

葉山さんからもらったまめの助キーホルダーを指に引っかけて眺める。
マブかった…、俺にはもったいねぇぐらいに。
見た目も、中身も。

葉山さんの純粋さは、ツッパリやってる俺の気持ちを緩めてくれる感じだった。
とにかくあったかいし優しい。
何か、ホッとするかんじ。
学が無ぇ俺には、この感覚を表す言葉が見つからねぇ。


ドサリ


俺の視線はキーホルダーから、何かが倒れた音がした方へ。
荒れた学校に、荒れた裏庭に集まる、荒れてる俺ら。
あー、そうだそうだ。
和んでた感情が現実に引き戻される。

キーホルダーをそっとポケットにしまった。


「あそこはよ、新設の高校で二年坊までしかいねぇんだよ」


あんま話は聞いてなかった。
どうやら開久の制服着といて逃げた奴がいるらしい。


「つまりは俺とタメで、テメェより年下ってワケだ。開久はな、ボンクラの集まりだ。喧嘩で負けたらお終ぇなんだよ！！」


ボンクラの集まり。

智司が蹴り入れてる様子をただ見る。
その言葉は頭の中で反響した。

そうだ、俺らは学も無いただのボンクラ。
喧嘩しか能が無ぇバカ。

そんな俺が、あんな優しくてぽやぽやした子と釣り合うとでも…？


「今日中に今井って野郎を連れて来いコラ！」


そんな事を一瞬でも考えた自分を鼻で笑う。
ボンクラに戻ろう。
俺は椅子から立ち上がった。


「まあまあ智司」


智司に蹴られ立てなくなったソイツを見下げる。


「おい、喜べ。……俺が付いてってやるよ」


そうだ、これが俺だ。
卑怯でクズで喧嘩しか胸を張れるもんが無い。
さぁ、どうやって今井って奴をぶちのめしてやろうか。


「落ち着けよ、智司。腹減ってんだろー？何か買いに行こうや」

「俺は仲間を見捨てる奴がムカつくんだよ…」

「あー、分かる分かる。ほら。あと話聞いてくんね？」


適当に返事しながら智司の肩を軽く叩いて促した。
あー、でもやっぱ智司には言っとこ。
喧嘩しか能がなくても何かしらアドバイスしてくれんだろ。


「は？……今何つった？」

「ちゃんと聞けよ。この前めちゃくちゃマブい子とサ店行ったんだって。もうマジでかわいいんだよ」

「おい、は？今井の話だったろ」

「その子、成蘭の葉山Aちゃんっていうんだってよ。名前までかわいいのは反則だよな」

「いや、葉山Aちゃんじゃなくて今井だって。何だ、俺が間違ってんのか」


ついさっきは釣り合うわけないと自分を鼻で笑ったが、やっぱ俺はAちゃんを諦めたくはないらしい。

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