相良くんとかわいいものにかこまれたい！よん【今日俺】

こんな俺が少女漫画みたいな恋をする ページ44

「Aちゃんみたいな子いたらソッコー頭降りてんな」


俺は相良猛(24)。
学生の頃は開久でナンバー2張ってたが中退。
今は智司と工場で真面目にやってる。

そんで1ヶ月前に離婚してたりする。


「もう女は絶対ぇ信じねー。俺はAちゃんをずっと見守ってく」


1ページ1ページ噛み締めながら読んでんのは少女漫画。
『あなたとかわいいものにかこまれたい！』
離婚のきっかけになった原因だが、悪いのは全部向こうだと思ってる。

離婚したと知った智司とその彼女、いや草食動物、…いや、嫁が「これ、相良先輩が推してる作家さんの新刊です…」って差し出してきた。

忙しくて新刊買えなかったし有難いが、あの時の哀れみの目は許さねぇ。


「だいたい、見た目だけだったって事だよな。漫画読む俺に幻滅して離婚ってよ。何が"思ってた俺と違う"だよ」


気分転換に外に出たその先で、店に並んでるもんを見て足を止めた。


(まめの助ステッカーの新作…！桜の花びらに埋もれて口元しか見えてねぇじゃん…！デザイナーまじで天才か？)


バイクに貼ろうと思ってそれに手を伸ばして、指が触れた瞬間だった。


「あ…っ」


焦ったような声が聞こえて振り返るとそこに、え、嘘だろ。


「………Aちゃん…」

「えっ？私の名前…どうして…。お知り合い…でしたか？」


そっくりだった、俺の推しに。
もう同一人物じゃん、本人？ってぐらいで。


「最後の一枚、受け取ってください！まめの助を大切にしてあげてくださいね…！」


その子は好きなキャラが一緒で、


「あー…、じゃあ、礼に、バイク乗ってくか…？」

「えー！いいんですか…？バイク初めて乗ります！」


笑顔がかわいくて、もうめちゃくちゃかわいくて、けど…、


「私、喧嘩する人が怖くて…。あ、相良さん髪明るめですけど、元ヤンだったりしますか…！？」

「…………いや。俺も喧嘩は、苦手な方、かな」

「ふふっ、よかった！学生の頃ね、お友だちがスケバンで…、」


ヤンキーとか喧嘩が怖くて苦手、らしい。
バレたら引かれるか？
嫌われる…。

だから隠してでも、俺は、Aちゃんとーーー、


❀


「Aちゃん、待たせて悪かったな」

「あ、相良くん！大丈夫だよー！立ち読みしちゃってた…。あ、聞いて！次から始まる漫画が面白そうなの」

「へぇ？何てやつ？」

「『オタクな俺が少女漫画みたいな恋をした話』！」

「え、長。もっかい言って」


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