検索窓
今日:20 hit、昨日:1 hit、合計:57,706 hit

38話 ページ40

「へ……?」


空気を多く含んで、ようやくでた声は静かな空間に溶け込んでしまうのではないかと思うほど小さなものだった。


さらさらと髪を撫でてくれる坂田さんの手はいつの間にか離れていて、それでも変わらない優しい坂田さんの笑顔を見ていると涙が溢れてそうになる。


「な、んで、ですか?」


泣いちゃいけない。


泣くのはずるい。


嗚咽だけは絶対に出さないように恐る恐る声を出せば、たどたどしくなってしまった。
そんな私を呆れることなどせず、優しい瞳でこちらをみている坂田さん。


「俺ね、Aちゃんの笑顔が大好きなんよ。
明るいだけやなくて、ちゃんと優しさもあって、どんな時でもみてるこっちが明るくなってまう。
それを守っていきたいって思ってたんやけど、俺には無理やったね」


自然と涙伝っていた私の頬を、坂田さんは優しく包み込む。
その顔は辛そうで、苦しそうで……。
それでも笑おうとしていたため、とても痛々しかった。


「どうか、ずっと笑顔でいてや。
他の誰とでもええよ。Aちゃんが笑顔でいれるんなら、俺は我慢できる。
やから」


頬を包む手に少しだけ力が入ったように感じた。


そして坂田さんは、また刻み込むように残酷な言葉を言うのだ。


「俺と別れて欲しい」


あぁ、こんなにも思ってくれていたのか。
私が知らない間に、私はこんなにも愛されていた。
坂田さんは本当にずるいと思う。
こんなにも愛してくれて、こんなにも考えてくれたなら、坂田さんの言うことに従わなきゃいけないじゃん。


そして私は無理矢理に笑って、口を開いた。


「はい」


願わくば、今の私の笑顔に悲しみの色がうつりませんように

39話→←作者から



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (42 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
117人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

なつの(プロフ) - 闇雲さん» ありがとうございます!最近時間が取れず、ここまで更新が長引いてしまいました。やはりコメントの力はすごいですね!かなり元気付けられました!本当にコメントありがとうございます!! (2019年5月14日 7時) (レス) id: 1923d39783 (このIDを非表示/違反報告)
闇雲 - ヤバイですね!!もう、心臓がバックバクで、今にも張り裂けそうな感じがします!!凄いいい話だと思います!!更新頑張って下さい☆期待してます!! (2019年5月14日 1時) (レス) id: a89d1b894b (このIDを非表示/違反報告)
なつの(プロフ) - やさん» ありがとうございます! 浮気ものは思っていたより難しく感じていたので、そう言っていただけると嬉しいです!これからも更新頑張ります!!! (2019年1月17日 18時) (レス) id: 1923d39783 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - はじめまして!坂田さんの浮気の理由とか、センラさんのつけこみ方とか全てが本当に大好きで、、!この作品とても楽しみにしています!今後の更新待っています! (2019年1月17日 9時) (レス) id: 8d18ba62e8 (このIDを非表示/違反報告)
なつの(プロフ) - 紅葵さん» ありがとうございます!こちらの作品は更新がかなり遅れていますが、必ず更新しますので待っていただければ幸いです。ありがとうございます! (2019年1月9日 20時) (レス) id: 1923d39783 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:なつの | 作成日時:2018年12月15日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。