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「……なるほど」
真っ直ぐな目を見て頭で考える。
姉さんは彼方さんにも協力してもらった、と言っていた。
_ということは彼方さんに助言でももらったか
「なら、潔く諦めるのも手では?」
「は?」
意味がわからないと顔をしかめるうらたさんに、微笑みかける。
彼方さんにもうらたさんにも悪いけれど、僕は姉さんを優先させてもらうよ。
「僕のこの冷たい態度も姉さんの言葉も、あなたのためだとそう感じているのであれば、それに甘えた方が良いのではないですか?」
「お前、何言って」
「誰もうらたさんに辛い思いをして欲しくないと言っているんですよ。
事実、あなたが想像している以上にここでの生活は厳しい」
着付け、華道、茶道、琴。
これらの他にも学ばなければいけないことは山ほどある。
それを今から覚えるのは骨が折れるだろう。
暗にそう言ってやれば、うらたさんはさらに顔をしかめた。
僕は目を細めた。
やっと現実を見たか、と
_姉さんへの想いはやはりその程度なのか、と
「やっぱり」
うらたさんはどこか怒ったようにそう言った。
「やっぱり俺は諦められねえ」
「だからそれは」
「厳しいことだって、辛いことだってお前らが決めることじゃない」
はっきりそう言いのけた彼に、僕は驚いた。
うらたさんがこんなにきっぱり僕に言ってきたのは初めてだったから
「俺のためだって分かってる。けど、その厳しいことも辛いことも、やる、やらないを決めるのは俺だろ」
何も言えなかった。
_僕らはうらたさんのためと言いながら、大切なことをしていなかった。
「俺の意思を決めるのは俺だ。お前らじゃない」
うらたさんの意思を僕らが勝手に決めていた。
それはそんな簡単にしていいことじゃない。
「……まったく」
とんでもない人だ。
目を見て、言葉を聞けば、彼がどれだけ姉さんを好いているのか分かる。
きっとどんな思いをしても、姉さんのそばにいたいんだろうな。
「仕方ない人ですね」
ふっと口角が上がるのがわかる。
この人と一緒にいると、自分が無意識に微笑んでいることがあるから少し照れ臭い。
「千景……?」
「とりあえず姉さんが来るまで待って」
「何しているのですか?」
ふと凛とした声が聞こえて、僕とうらたさんはそちらを向いた。
「わっくん……?」
そこには美しい着物をきた姉さんが、先ほど口にした名前を押さえるように口に手を当てて立っていた。
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なつの(プロフ) - ゆらさん» ありがとうございます!拙い文章ですが楽しんでいただけたようでとても嬉しいです! (2021年1月12日 8時) (レス) id: 1923d39783 (このIDを非表示/違反報告)
ゆら - めっちゃ泣きました!!!文才が…もう…(語彙力) (2021年1月11日 22時) (レス) id: 178b398402 (このIDを非表示/違反報告)
なつの(プロフ) - 刹那@pdaoさん» コメントありがとうございます!そうでしたか!楽しんでいただけて何よりです。後進の方も頑張っていきたいと思いますので、これからもぜひお楽しみください! (2020年7月17日 22時) (レス) id: 1923d39783 (このIDを非表示/違反報告)
刹那@pdao - もうすでに布団がびしゃびしゃになりました(www)こういう類いのお話すごいすきなんです!ありがとうございます!ごちそうさまです!更新頑張ってください!!! (2020年7月12日 22時) (レス) id: 3de1e2bdfb (このIDを非表示/違反報告)
なつの(プロフ) - WAIHA,AIRA:さん» ありがとうございます!これからも頑張っていきたいと思います!更新、ぜひ楽しみにしていてください! (2020年4月28日 7時) (レス) id: 1923d39783 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なつの | 作成日時:2020年4月12日 16時