Day 10 ページ30
「くそー!そらるさんに勝てない!!」
「そらるさんに勝つなんてまだ早いよー」
「あぅ……休憩しよう!」
私は1時間近く握りしめていたコントローラーを置いて、自分の荷物の場所に移動した。
あ、逃げた、と後ろでそらるさんが言ってるけど聞こえないふり!
だって勝てないんだもん!
「あれ?」
「どした?」
荷物から取り出したスマホを開くと、珍しくお母さんから着信が来ていた。
それも何件も
「え?えっと……ちょっと電話してくる!」
スマホを握りしめてリビングを出て、廊下に立つ。
なんだか少し嫌な感じがする。
深呼吸して、私は着信履歴をタップした。
『やっと出た!』
「うわぁ!お母さんどうしたの?」
大きな声で言われた!耳痛い!!
少し拗ねていると、少し高めの声を抑えて、お母さんは口を開いた。
『宮城に帰ってきなさい』
「え……?な、なんで?急すぎじゃ」
ドクドクと嫌なリズムで心臓が鳴る。
冗談でもお母さんはこんな声でそんなこと言わない。
『実は_』
私は話を聞いて、頷くことしかできなかった。
「……A」
リビングのドアが開いて、そらるさんが顔を覗かせる。
きっと電話の受け答えが聞こえたんだ。
「そらるさん……」
ゴトっと鈍い音がしてそちらを見ると、どうやら私はスマホを落としていたらしい。
自分の手の力が抜けているなんて思わなかった。
「大丈夫、大丈夫だから」
そう言ってそらるさんは私を抱きしめて、大きな手で頭を撫でる。
じんわりと目にたまる涙を流さないよう、目にグッと力を入れる。
そらるさんはきっと私を安心させたいだ。
だから”大丈夫”、なんて言うんだ
私が”私”でいる限り、そんな言葉は自分の中で存在しないのに
私はそっとそらるさんの胸を押して離れる。
目を見て、言葉を選びながら
「そらるさん、お願い_」
私は最低な”お願い”をした。
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なつの(プロフ) - ゆらさん» ありがとうございます!拙い文章ですが楽しんでいただけたようでとても嬉しいです! (2021年1月12日 8時) (レス) id: 1923d39783 (このIDを非表示/違反報告)
ゆら - めっちゃ泣きました!!!文才が…もう…(語彙力) (2021年1月11日 22時) (レス) id: 178b398402 (このIDを非表示/違反報告)
なつの(プロフ) - 刹那@pdaoさん» コメントありがとうございます!そうでしたか!楽しんでいただけて何よりです。後進の方も頑張っていきたいと思いますので、これからもぜひお楽しみください! (2020年7月17日 22時) (レス) id: 1923d39783 (このIDを非表示/違反報告)
刹那@pdao - もうすでに布団がびしゃびしゃになりました(www)こういう類いのお話すごいすきなんです!ありがとうございます!ごちそうさまです!更新頑張ってください!!! (2020年7月12日 22時) (レス) id: 3de1e2bdfb (このIDを非表示/違反報告)
なつの(プロフ) - WAIHA,AIRA:さん» ありがとうございます!これからも頑張っていきたいと思います!更新、ぜひ楽しみにしていてください! (2020年4月28日 7時) (レス) id: 1923d39783 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なつの | 作成日時:2020年4月12日 16時