その歌姫、潔癖症につき。【BTS】 (ページ2)

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2話ページ2

you side.

ｽﾀｯﾌ「次Aさんお願いします」

楽屋で待機していた私にスタッフは声をかけるとマイクを渡してくる。

汚い。

そんなに近くで話しかけないで。
唾が飛んでるかもしれない。
今すぐ体を洗いたい。

使い回しのそのマイクも。
しっかり除菌しているのだろうか。
手袋をはめているとはいえ、触るのに躊躇してしまう。

『わかりました』

大丈夫だ、と自分に言い聞かせると

震える手でマイクを握りステージへと向かう。

自分は歌を生業にしている。

潔癖症の過ぎる私はまともな仕事に就く事が出来なかった。

幾つかの会社の面接を受けた。

面接の練習は嫌という程した。
大した緊張をすることもなく、リラックスした状態で受けられるはずだった。

しかし、いざ面接になると。

私は椅子に座る事が出来なかったのだ。

テンパってしまって言葉が出なかったとか、
マナーがなってなくて粗相があったとかそれ以前の問題。

誰が座ったとも知れないその椅子に座るなんて、私にとってはあまりに大きな試練だった。

無論、全ての会社から不合格通知をくらった私は明日の生活に餓えていた。

どうにでもなれと、昔母から教わった歌を口ずさみながら帰路に着く時、

今の事務所の社長に拾ってもらった。

ステージに立つなり、スポットライトが私を照らすと、ワッと大きな歓声が上がる。

観客「「「「「「Aー！！！」」」」」」

私の名前が大きく呼ばれる。

嗚呼、ごめんなさい。

私を応援してくれる大切なファン。

貴方達ですら汚く見えてしまう。