◇ ページ25
.
綺麗な白い肌は、口の横に二つの窪みを
たしかに作っていた。
『あの....！』
私の口を封じるように、彼はサッと手を離すと花の入れてあるガラスのショーケースを指さした。
『あ....お花ですか？』
彼はコクリと頷いた。
『どの花にしますか...』
そのまま彼が近づいて指さしたのは
.
ブルースターだった。
『分かりました。少々お待ちください。』
心を落ち着かせるように、震える手を抑えるように
茎を切り落としていく。
二人の少しだけ離れたでも離れすぎない距離の間を茎の音が静かにこだましていく。
懐かしい呼吸のリズム
空気の感覚
全てを昔のままに
『リボンは....どうしますか』
声が少しだけ裏返った。
それでも彼は...
貴方は、えくぼをそのままに白いリボンを指さした。
.
.
『出来ました』
背がいくらか高くなった貴方にブーケを手渡した。
財布を出そうとするから、
『あの、お代は良いです。それ、私の気持ちだから。』
そう伝えて
��ありがとう��の気持ちを込めて
かすみ草を添えた。
ブルースターとかすみ草が綺麗に混ざりあった花束を渡すと、
花束を手に持った貴方は、本当に嬉しそうに、
ふわっと笑った。
初めて見るあなたの鮮明な笑顔だった。
貴方との沢山の思い出の全てが、パズルのピースがハマるように
色がついて美しい花が開いていく。
あの時みたいに、心が、ぽかぽかする。
貴方は名残惜しそうにブーケを私の方へ差し出すと、私の目を見つめた。
『え？』
貴方から目が離せなくて、周りの色がぼやけて行く。
まるで時が、世界が止まったみたいだ。
『くれるの？』
私がそう言うと、こくりと小さく一度だけ頷いた。
.
.
手を伸ばす度、春に溶けていく貴方の背中を見送りながら
心の中で
何度も、
何度も
貴方の名前を呼んだ。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 313人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ほくほくスイートポテト男爵芋娘(プロフ) - jen（読み垢です）さん» jenさんんー！あちこちでお会いできて超絶嬉しいですうおおお！是非是非感情豊かに読んでもらえると嬉しいですよう(*'▽'*)照 (2023年1月21日 0時) (
レス) id: 2e9247ccdf (このIDを非表示/違反報告)
jen（読み垢です）(プロフ) - ほくほくさん…こちらも読ませていただいています 切なくて動悸が止まらない。 切ない。 (2023年1月20日 20時) (レス) @page15 id: 8b083b7e19 (このIDを非表示/違反報告)
ほくほくスイートポテト男爵芋娘(プロフ) - リュイさん» お返事遅くなりました(´･･`)リュイさん、こんばんは！少しだけ悲しめの物語にはなってしまったのですが、こちらこそ、ありがとうございます、ですTT応援も本当に有難いです！これからも頑張ります！是非、またどこかでお会いしましょう！ありがとうございました！ (2021年10月21日 19時) (レス) id: 2e9247ccdf (このIDを非表示/違反報告)
リュイ - 文才…終わった後、少しだけ泣いてしまいました。ありがとうございます。これからも頑張ってください！応援してます！ (2021年10月20日 19時) (レス) @page27 id: 2183f1b6e8 (このIDを非表示/違反報告)
ほくほくスイートポテト男爵芋娘(プロフ) - もちさん» もちさん、、、！そう言っていただけると安心いたしました....泣こちらこそ読んでいただいてありがとうございますTTコメントも嬉しいです、ありがとうございました(;o;) (2021年10月17日 6時) (レス) id: 2e9247ccdf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ほくほくスイートポテト男爵芋娘 | 作成日時：2021年10月9日 0時
