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「...っ、！」
それは突然の事だった。
ズキリとした鈍痛が、指先からじわじわと広がっていく。
「どうした？」
「あ、いや...なんでもない」
なんでここに画鋲が？こんな所に、なんでこんなものが？
浮かび上がる疑問はいくつもあったけど、とりあえず薄らと血が滲んだ中指を慌てて背中に隠した。
ウォヌは一瞬不思議そうに首を傾げたけど、特に気にしてはいないようだ。
当直を終えて帰ろうとして、下駄箱で靴を取り出そうとした時の事だった。
指に何か鋭いもの...画鋲が刺さったのだ。
朝下駄箱に靴を入れた時にはこんなものは無かった。自分が持ってきた訳でもないし、じゃあなんでこんな所に画鋲が？
誰かが間違えて入れたとか...でもそんなことあるわけが無い。
「(...悪意を持った誰かがわざと入れた？)」
これ以上考えるのもなんだか怖くて、とりあえず画鋲を摘んでポケットにしまっておいた。
「わ、これってこんなに重いんだね」
ペットボトルにスポドリの粉を入れて混ぜ合わせていると、ふと近くから掛かった声。
パッと後ろを振り返ると、そこには麦茶の入ったジャグを抱えてにこやかに笑っているジョシュア先輩の姿があった。
「持ってくよ。それもあるし大変でしょ？」
慌てて遠慮するけど、有無を言わさずジャグを運んでいくジョシュア先輩。
別に同時に持てないわけではないし、無理だとしても二往復すればいいと思ってたんだけど...。
彼がズンズンと進んでいくから、私も何も言えずに後を追った。
「いつもこんなの運んでるんだね」
「あ、ありがとうございます...！」
そういえば今、唐突にユナオンニが言ってたことを思い出した。
2年生の中でも人一倍優しくて、マネージャー業を手伝ってくれる部員がいて...それがジョシュア先輩だったような。
"ジェントルマンで紳士的だし、困ったらジョシュアに助けを求めるべし"って聞いてたけど、あれ、本当だったんだ。
「何か最近困ったこととかない？」
「...？いえ、特には...」
「そう？それならいいんだ」
彼が何に心配してるか分からなかったけど、心当たりもないし頭の中にははてなマークしか浮かんでこなかった。
私のその様子に納得がいったのか、ジャグを置くとにこりと微笑んでコートの中に消えていくジョシュア先輩。
...........彼、紳士過ぎない？
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作者名：key
| 作成日時：2021年1月5日 15時
