好きならいつ始めても遅くはない sixth

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『...A、悪いことは言わない。一旦休養を入れるべきだ』

パンPD直々の電話。

それもそうか...今日で欠勤も3日目だ。

初日で倒れた私だが、実はその翌日も、その翌々日も練習へ参加しようと事務所へ向かっていた。

途中まではなんの問題もなかったのだ。

でも、男の人を見た途端に突然何か発作を起こすかのように震えが止まらなくなってしまう。

通り過ぎる人全てがあの男に重なって見えるのだ。それが体格のいい人なら、なおさら。

『...もう少し、時間を下さい。今は抜けられないんです。...明日には治しますから、絶対に...明日には、』

『昨日にも、同じことを聞いた』

パンPDの声は震えていた。

『...頼む、心配なんだ。これ以上無茶をして状態が更に悪化したらどうする？もう一生ステージに立てないかもしれないんだぞ』

『っ、でも、今は売り出し時だって、』

デビューしてまだ1年も経っていない。穴は開けられない。...それは、パンPDもよく分かっているはず。

『それに今は騒動で私達の話題性もあります』

『................本気で言ってるのか』

整形暴露、借金疑惑、暴行事件。

立て続けに起こっている騒動は、不本意にも私達の話題性を高めていた。

このままいけば、12月の新曲は間違いなく爆発的に伸びるだろう。

3人揃っていないと意味がないのだ。成功させるには、みんながいないと。

『...お前のその痛みは、見世物じゃないんだぞ』

『分かってます。......でも、お願いします。私は大丈夫です。来週には、いや...明日には必ず復帰します』

『心の傷はすぐには治らない。お前も自分で実感しただろう？』

『何とかします。...お願いです、お願いします。もう少し、頑張らせて下さい』

せめて次のカムバックまでは、いや...せめて今年が終わるまでは。

もう少しだけ、私は頑張らないといけない。

『..............分かった』

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