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「1、2、3。1、2、3。そこ遅れてる!!」
「はい!!」
いつも通り怒鳴られて、慌ててリズムを追いかける。
右、左、右、右。左、右、左。
もっと早く。もっともっと早く。
体全身を使ってリズムに乗る。
ホビみたいに一瞬の裏拍も逃さずに、音楽の奥の奥の小さな効果音も聞き取る。
ジミンちゃんみたいにしなやかに。でもグクみたいに力強く。
タタン、タン、タンタン。
ウェーブを入れながら左右にアクセントを付けて、思いっきりターンをする。
負けるな。
絶対に負けるもんか。
「2、3!はい!今日はここで終わり、お疲れ様!」
終わりの合図が聞こえた途端、床につっ伏すように倒れ込んだ。
何とか今日も最後まで踊り切れた。
シャワーを浴びて、少しだけ仮眠してまた明日のレッスンに臨もう。明日は土曜日だがら新しい曲に変わるはずだ。
そうノロノロとシャワー室へ向かうと、先生から再び収集がかかった。
慌ててダッシュで集まると、先生は思いもよらないことを言った。
「実は明日、近くのテレビ局で音楽番組のリハがあるんだけど、見学が出来るみたいなの。練習生達に刺激を与える目的だと聞いたわ。」
その言葉に生徒みんなはおぉ!と歓声を上げた。
「ただ、全員は行けなくて...その他の事務所からも人が集まるのね。ここの事務所はほら、そんなに権限ないでしょ。だから1人しか連れて行けないのよ。
問題は誰を連れてくかってことなんだけど...そうね、A。行ってきなさい。」
急に自分の名前が呼ばれた時、驚きで肩が跳びはねた。
なんで私が?私よりもデビューに近い人は沢山いるのに。
「最近のA、凄い勢いで上達してるわ。貴女は努力家だし、本物のステージ見てきたらきっともっと成長出来るわよ。」
その言葉を聞いた時、目の奥からじわじわ熱いものが広がってきた。
その時はぐっ、と堪えて大きく返事をしたが、シャワー室へ向かった途端に涙が止まらなかった。
私の努力が、やっと報われたような気がした。
私は間違ってなかった。
それがただひたすらに嬉しくて、自分が初めて誇らしく感じた。
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てこゆの(プロフ) - ?めぃろ?さん» コメントありがとうございます!!(TT)お褒めの言葉嬉しいです!私も現実感を意識して作った物語なのでそう言って頂けて嬉しいです〜!! (2021年4月26日 17時) (レス) id: bebd489c5d (このIDを非表示/違反報告)
?めぃろ?(プロフ) - アイドル系の小説って、夢主が完璧すぎてどうしても引っかかってたんですけど、こういう現実的な小説を求めてたので、すごい嬉しいです。 (2021年4月26日 16時) (レス) id: a284f3be6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:key | 作成日時:2020年5月12日 19時