【ハイキュー】れもん味【短編集】

【赤葦京治】《どうして.2》 ページ8

＊

『…っ、A…ｯ』

「…京治…。わた、し…ｯ」

Aは泣いていた。

死にたくない、死にたくないよ、と訴えかけてきた。

『…っ！』

なにも、言えなかった。

無力な自分に嫌気がさす。

『ごめん…、ごめん…ｯ。』

そう呟いてはAの手を握った。

「っ、けい、じ。…ごめんねぇｯ…一緒、に居られなくなっちゃ、うね…っ」

苦しそうに悲しそうに、微笑むA。

黒尾さんも狐爪も親御さん達もAも泣いていた。

泣き声が、病室に響く。

「…大好きっ、だよ…。大好きなんだよぅ、っ。死にたくない、よ。まだ皆と居たいよ…っ」

泣きたかった、泣いて、泣いて、俺も、大好きだよ、まだ一緒に居たいよって言いたかった。

でも、なんでだろうね。


―――涙も、声も、出なかったんだ。

「…お母さんっ、いつ、もいつもありがとう…。わ、たしと鉄兄を一人で、育ててくれて…っ。うま、れ代わってもまた、お母さんの子供になりたいな…っ！」

泣きながら微笑み、そう言ったA。


「Aっ…！」



Aのお母さんは泣き崩れた。
黒尾さんがそれを支える。


「鉄兄…。17年間、いっぱい迷惑かけちゃ、ったかもしれないけど、っ。大好きだよ…、大好きっ…。ありがとう、。最高のお兄ちゃんでいてくれて…!」

「…な、かすなよ…っ。」


Aは、そう言って黒尾さんに笑いかけた。いつもみたいな、綺麗で温かい笑顔で。


「……研磨…。研磨にも、たくさん迷惑かけちゃったね…っ。でも、楽しかった。…たくさん遊んでたくさんゲームして、っ楽しかったよ!……また、遊びたいな…」

「…っ、俺も、、楽しかった…!…っ、俺もだよ…」

ありがとう、と狐爪にそう言うと、Aは、こっちを向いて、


「………京治…。いままでも、これ、からもずっと、ずっと、愛してる…っ、、ありがとう、っ。」


いままでで、一番の笑顔でそう言ったAは、そのまま、、眠った。




黒尾A。

2月4日

午後18時38分。

永眠。

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