【ハイキュー】れもん味【短編集】

【西谷夕】《記憶》 ページ32

第三者視点。

＊


――――…、ドンッ。


という鈍く、強い音が歩いている廊下全体に響き渡る。まるで人間が床に打ち付けられたような音が。


いきなりの事に驚き、音の方へと振り向くと、



そこには――――…少女が横たわっていた。



「A！！！」

目を見開き、大きな声で叫んだ中学生くらいの少年がその少女に駆け寄って抱き寄せている。

あまりに突然な事に思考が停止していたが、我にかえり、すぐさま119番にかけた。



救急車を呼んで、少女の方を見れば、頭を押さえ目を開けているようで、少年が安心したように、息をついている。




が、それは次の瞬間に


呆気なく壊れた――…、



「―…、ごめんなさい、貴方は、誰？私は、、誰？」


首を傾げ、不思議そうにそして、どこか哀しそうな表情を少年に向ける少女。

その言葉を聞いた少年は、目を見開き、涙が薄くたまった瞳から、粒を溢した。



何故、自分がこれを見ているのかは分からない。けれど、何故だか体は動かなかったんだ。


「…、A、？嘘、だろ？…冗談やめろ、よ！」


今にも泣き崩れそうに、大粒の涙がたまった瞳を少女へと向け、そう言うが、少女は冗談なんかじゃない私は、貴方は誰なの？と涙を流す。


少年が泣き崩れる声が聞こえる。


少女が戸惑い、問い掛ける声が聞こえる。


救急車のサイレンが、鳴る音が聞こえる。




耳を塞いで、逃げ出したかった。
俺には関係ないのだから。

知り合いでもないあの二人から、逃げ出したって構わない筈だ。



――…、苦しい、のに、なんでだろう。



なんで、俺の口角はつり上がってる。


なんで、俺は笑い声をあげている。


なんで、俺の腕は誰かを突き落としたような体勢をしている。




あぁ、そうだ。



俺が、階段から突き落としたんだった。

それと同時に、体が浮遊感を感じた。





体に激痛がはしり、

サイレンの音が、やけに遠くに聞こえた―…。






―――――――
いみふすぎた。

【オールキャラ?】《もしも貴女にキスされたら》→←【花巻貴大】《お泊まり.2》

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す