春 ページ4
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「 晴れてよかったね。」
「 嗚呼。」
「 制服、似合ってるよ。」
白い髪が揺れる。
母に似た白い髪だ。
「 桜、咲いたね」
「 春だからな」
中学の入学式。
来てくれる家族がいるはずも無く壱つ上の貴方の御名前が来た。
目立つ容姿だな、って思った。
「 貴方の御名前、役員のやつとかあっただろ。それどうすんだよ」
「 ちゃんと担任の先生に話しておいたよ。後日姉が説明聞きに来ます、って。でも災難だね、姉さんの小学校と入学式被っちゃうんだもん」
兄達は既に家を出ている。
本当は姉さんが来る予定で居たが小学校と入学式が被って来れなくなった。
前日まで謝られた。
「 でも、
少し難しい顔をしながら言う姉に同情が募るのは仕方の無い事だと思った。
貴方の御名前の入学式は彼奴が来た。
悲惨だったらしい。
その時の貴方の御名前は酷く荒れた。
「 '一生視界に入るな'だっけか？」
「 '一生視界に入るなクソ'じゃなかったっけ？」
酷く温暖な姉からは一生聞くことの無いような低い声で、一生見ることの無いような怖い顔をしていた。
物理的にもだが、姉だからだろう酷く怖く感じた。
貴方の御名前を怒らせるのは辞めようと思った。
「 まぁ、もういいの。それは。それよりも今日は私と姉さん二人が作ったフルコースです！ お蕎麦沢山茹でるからね！」
「 ＿＿＿嗚呼、楽しみにしてる」
俺達家族は歪んでいる。
ただその中で俺達の均衡は保たれていた。
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作者名：湊 | 作成日時：2019年6月28日 18時
