ぼくのともだち。 (ページ4)

今日:2 hit、昨日:4 hit、合計:6,001 hit

・ページ4

侑李side

もう嫌だった。7歳ながら、本で覚えた命の大切さ。そんなのどうでもよかった。

逃げたい、逃げたい。

殴られたくない、怒鳴られたくない。

それよりも

「人に愛されたい。」

そんな思いでとにかく走った。病院からの抜け道は知っていたし、小柄だからすぐに外に出ることができた。

久しぶりに外に出たら草の匂いがした。お日様の匂いもした。

特に行くあても無かった。だけど、僕の体は自然と海の方に向かっていた。

「これが海って言うんだ...。」

僕は楽な服装のまま、砂浜に足を沈める。

外出制限がかかっていた僕にとって、′海′を見れたことは今までで1番良い経験になったと思う。

アザも左手にたくさんある点滴の痕も気にならないくらい、初めての幸せだった。

しかし ――

「ｯﾊｧｯﾊｧ...うっ...」

心臓の辺りがドキドキする。息も苦しい。

今までも何度もあった。だけど、主治医には言えなかった。だって、言っても何もしてもらえずに叩かれるだけだから。

だけど、今度のは違った。

「ハァッ...ハァッ...ハァｯ...！」

どんどん酷くなる動悸、息苦しさ。
...これはまずい。病気のことを何も分からなかった僕でも直感でそう感じた。

倒れるっ...！

そう思ったのも束の間 ――

周りの人の悲鳴と共に、

僕は意識を手放した。