妖怪ではなく元人間

思考が飛ぶほど ページ10

貴「やべっ。」
咄嗟に松岡君を道の端まで突き飛ばす。
松岡君は突然突き飛ばされたことに驚きつつも、戸田君を落とさずすぐさま体制を戻していた。
それが、今の今まで見えていた僕の視界。
一瞬の出来事だった。
光が頭部に直撃して下顎から上が全て消し飛んだ。
ぐらりと体が傾いて、ドバッと血液が噴き出した。
指など一部の筋肉が痙攣を起こし、ビクビクと動いていた。
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貴「…これはどういう状況？」
蘇生が完了した為、むくりと体を起こす。
あたりには帯電する静電気。
目の前には松岡君の髪の毛で逆さに釣られた野沢君と沢城君。
やたら笑顔だけどめちゃめちゃキレてる松岡君。
完全に巻き添えを食らった戸田君。
戸「なんとかしてくれ。俺だと言葉が聞こえてない。」
貴「彼怒ると長いからね。」
やれやれと立ち上がり、のんびりと歩いていく。
バチバチと髪の毛に静電気が走り、ビリッとした空気が漂う。
貴「松岡君、もうそこまでにしてやってよ。わざとじゃないんだからさぁ。」
松「貴方は優しすぎるんですよ。普通の肉体であれば既に死んでいるレベルの大怪我ですら完治してしまう。死に慣れすぎです。」
貴「完治、とは違うかな。現にほら、僕には治らない傷がある。」
松「………。」
機嫌が悪化した気がする。トラウマ傷抉ったからかな。
貴「君も十分優しいよ。僕みたいな半端者ですら気遣って何でもかんでも助けようとする。僕から見れば君は十二分に善人だよ。……さ、そろそろ各々の家に帰る時間だ。あの二人を離してやってくれ。」
松「……次同じことが起きれば容赦しませんからね。」
真顔で二人に言い放つものだから頭を撫で回しておいた。
野「やれやれ、自業自得とは言えなかなか堪えたヨ。」
沢「…痺れた。」
逆さ拘束から解放された二人は雑に降ろされて落ちてきた。
貴「体内電気使われたみたいだねぇ。松岡君の妖力は歴代でもトップクラス。沢城君といい勝負だ。僕の頭部消し飛ばしたの沢城君だろ。」
沢「貴方に当てるつもりはなかったんです。すみません。」
貴「いいよ。でもあれやっぱり指鉄砲の威力じゃないよね〜。高山君の威力と比べたら数倍はあるよ。」
沢「…怒ってないんですか？」
貴「僕より怒る人が周りにいるからね。僕が怒るのは身内がやられそうになった時だけだよ。一番最近で怒ったのは高山君以来かなぁ。」
野「あの時か〜。本当に怒らない君が一番激怒した時だよね。」
貴「そうなんだけど僕はほぼ人間だから心臓抜き取られて返り討ちに遭いましたけどね。」






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