妖怪ではなく元人間

札の中の子 ページ8

松「よく今生きてますね。」
貴「よく言われる。でも正直一番やばいと思ったのは誰かに危害を与えられそうになった時じゃなくて次元の狭間にぶっ飛ばされた時の方がやばかった。下手したらこの次元に戻ってこれなくなるところだったかもしれない。」
戸「次元の狭間？」
貴「僕の隕石のエネルギーは攻撃にも資源にも使えるんだけど、溜まりすぎると暴発して空間を歪めるんだよね。それに過去何回か巻き込まれてるんだけど、入れたからといって出口が必ずあるわけでもないから、生きたまま永遠を彷徨う羽目になってたかもしれない。確実性があるわけじゃないからさ。」
戸「異空間に取り残されるとどうなるんだ？」
貴「うーん…一生地面と会えない。」
松「地味だけど絶妙に嫌なやつだね。」
貴「浮遊霊に昇格かぁ…。」
松「足がなくなったら本当に幽霊になっちゃいますよ。」
貴「幽霊になるのはなぁ…妖怪ならまだいいんだけど。」
松「妖怪本当に好きですねぇ。都市伝説もその延長線で？」
貴「アレは僕ら人間が想像して生み出した空想上のものだからねぇ…妖怪が巻き込まれるわけにもいかない。」
松「八尺様は強かったですね。他にも何かその鉄パイプに入ってるみたいですけど、何が入ってるんです？」
貴「今のところはきさらぎ駅とてけてけを封じてる。何かあったら使ったりしてるけど。」
松「どう使うんです？それ二つとも確か駅が共通点ですよね。」
貴「松岡君もよく知ってる幽霊列車対策。」
松「…あー…なるほど。」
貴「あと単純に危ないからだよ。迷い込んで二度と帰ってこない人もいる。踏切関連だとさえりって女の子だったかなぁ。」
松「さえりさんはどうなったの？」
貴「さえにされた。」
松「さえ？」
貴「さえと呼ばれる足のない幽霊に引っ張られたんだよ。習字の習い事を終えた帰りにさえりは踏切で列車が過ぎるを待っていたんだけど、さえに引っ張られてさえと同じ足のない幽霊にされたんだ。しかもこれ前兆があるんだよね…。」
松「それは？」
貴「さえりは習字の習い事をしていたと言ったけど、習字で名前を最後に書くだろう？その時何度書いても最後のりだけがうまく書けなかったそうだよ。」
松「どうして？」
貴「り、は2本の画数で書ける文字だ。最後の文字がり。つまりこれはさえが引っ張っていた証拠。足のないさえと同じように、りの字を消す。これは足を奪ってさえりを同じさえにしようとしたってことさ。」
松「その子達は今どうしてますか？」
貴「二人とも地獄に落としたよ。危ないからね。」
いつのまにか寝た戸田君を背負い直し、二人は横丁へと足を進めた。



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