妖怪ではなく元人間

噂で変わる強さの敵 ページ4

貴「カラス達、できる限り急いでくれ。手紙を飛ばせる余裕があったとはいえ時間はそう多くないはずだからね。」
カラス達によって空を飛びながら移動を続ける。
貴「にしても事前情報なしか、何かしらの目撃情報ぐらい乗っけて欲しかったな…。」
カァカァとカラス達が騒ぎ出す。
どうやらこの辺りらしい。
下に見えるのは多くの田んぼなどが広がる田舎町のようだ。
貴「時間が本当に惜しいからここから行くよ。カラス達、本当に状況が危ないって思ったら野沢君か野沢さん呼んでくれ。」
ビル三階か四階ぐらいの高さから落下する。
地面に着地した途端下腿骨から物凄い音が響く。
貴「いっっ…。」
激痛が走るが、いつもの事なのでそのまま走りだす。
貴「あーもー！(妖怪)アンテナ持ってないし田舎に出る奴らの数は未だ計測できてないし本当何処に。」
居るんだ、とそう愚痴を言おうとしたその時、近くにあった石材でできた石塀が粉々に砕け散った。
貴「ヒェ…。」
こっちに転がってきたのは戸田君だった。
貴「戸田君！？だ、大丈夫？」
慌てて駆け寄れば痛そうに立ち上がる。相変わらず頑丈な体をしているものだ。
戸「俺は平気だ…それより、まだ戦ってる松岡君の方が心配だ。」
石塀よりも奥にはまだ戦っている松岡君の姿が見えてきた。
どう見ても戦闘態勢で髪が伸びている。
貴「あれは…八尺様か。」
戸「八尺様？」
貴「人間が生み出した噂の怪異。都市伝説の一つでね。八尺もある背丈に長い黒髪、白いワンピースに白い帽子が特徴的で、なによりも声はしゃがれて年老いた老人のような声でポポポと発する。」
戸「本当に昔から詳しいな…。」
松「見てないで早く手伝ってくれるかな？」
少し苛立ったような声で松岡君が言ってきた。
あまり余裕はないみたいだ。
戸「ごめんごめん、松岡君が余裕ないのって結構珍しいからさ。」
貴「戦い自体好きじゃないからね…松岡君は…。」
竹刀袋から鉄パイプを取り出して、八尺様に向かって構える。
貴「人の噂も七十五日とはよく聞くが、有名になり過ぎてしまったものほど長く名前が残り、噂がある限り彼らが消えることはないな。」
松「対処方はないの？」
貴「忘れ去られる事が一番だよ。でも人に手を出す奴らほどタチの悪いものはない。」
戸「だな。とりあえず二、三発ぶん殴ればいいか？」
貴「それ程度で済めばいいけど。」
八尺様に向かって鉄パイプを振り下ろす。
八尺様は容易く受け止めたが札が痛かったのか物凄い勢いでぶん投げた。
貴「うっそだろ…。」
ガンッと鈍い音がその場に響いた。




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