妖怪ではなく元人間

きさらぎ駅in怪異 ページ20

木製の、かなり古い列車が目の前に止まる。
誰もいない無人の列車。
乗り込むと、自動的に扉が閉まった。
タタンタタンと列車が揺れながら走って行く。幽霊列車みたいなものなので普通の人には視認すらできない。
『寝てていいぞ。』
『八尺様もおいでよー。』
鉄パイプから勝手に怪異達が出てきた。
てけてけ達は地面に這いずりながらのんびり寛いでいる。
八尺様は隣に座ってニコニコとご機嫌だ。
貴「人間に悪戯したらダメだよ。」
八『ポポポ…。』
『気に入られてるねー。』
『べた惚れだねー。対象が移ったのかな？その子を下手に好いてあのメクラに退治されても知らないぞー。』
貴「こら、テケテケ。野沢君のことをメクラ呼びしないの！」
『誰とは言ってないのによく分かったね〜。』
『ケタケタケタ！ケタケタケタ！』
にーっこり笑うテケテケ達。噂によって切断部分が違うらしく、それぞれ足からと、胴体からで体が切れている。
『今度メケメケとか首なしライダー捕まえよー！絶対楽しい！』
貴「メケメケかぁ…高山君の自転車練習とかに使えるかな？」
『悪霊だから青坊主呼ばなきゃねー。』
『キャッキャッ！』
田舎の景色がすっ飛んでいく。
鉄ではなく、木製であるところに趣きを感じる。
八『ぽぽ？』
どうしたの、といいたげに顔を覗き込んでくる。
貴「んーん、なんでもないよ。……ん？」
腕を見て気がついた。
6本の毛が絡まって、輪っか状になっており、1本1本の色や質感、感触が違う。
貴「…直前でみんなが結んでくれたのかな。…え、ちょっこれ外れないんだけど…まさか鬼太郎結び…？」
解ける相手がこの時代に存在しないので詰みだ。
解こうとしたら余計絡まるのでもう何もしない。
貴「…何処まで行くんだろ。きさらぎ駅自体に意思はないからなぁ…。」
悪意を持つのは基本人間に敵意があるやつだけだ。
殺意で、呪いで、恨みで。
『そろそろ着くよ〜！』
『八尺様も戻ろー。普通に出たりしたらみんなびっくりしちゃう！でもそれでも面白そう！ケタケタケタ！！』
怪異達が札に帰ったのを見届けて、列車を降りる。
列車も札に戻り、すーっと消えていった。
貴「うーん、田舎。それも結構な山奥ときた。」
とりあえず人に見えないように呪い(まじない)をかけて、人からの視線を避ける。
それでも霊感持ちとか、コチラ側に入りかけてる奴の目にはどうしても写ってしまうけれど。
貴「見えない方が身のためだ。片目を瞑ってるぐらいがいいんだ。結局。」
のんびりと歩き出す。
カラスに乗ってもいいんだけど、今は歩きな気分。





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