Unknownに来たPlayerは己の罪を贖罪する

真っ赤に染まった ページ44

貴「あぁ、もう心配しないでいいよ。死ぬ気はもうない。生きる意味はちゃんと見つけたからね。もう大丈夫。怖いものはあるけれど、それでもちゃんと生きていけるんだ。」
晴れやかとは言い難いが、何処か吹っ切れたように笑う。
影になっていた顔はフードがないことによりはっきりと見える。
鮮やかな髪は蛍光灯の光に不規則に輝き、その髪に負けずとも劣らない瞳は力強い目をしていた。
最初の頃はザッカリーが視線をどれほど合わせようとしても逸らされていたのに、その頃に比べればだいぶ進歩していた。
貴「…どうかした？」
キョトンとした顔をするその1。
ザ「…あぁ、いや。もう顔は隠さないんだなと思ってな。」
貴「顔…あぁ。もういいんだ。後ろめたいことはもうないからね。フードで隠す必要がなくなったんだ。…まぁこれからはフードをかぶってても顔は見えると思うよ。なるべく下を向いていたからよく影になってたんだと思う。」
ザ「もう下は向かないのか？」
貴「向く必要がないからね。なるべくは前を向くつもりさ。」
にっ、と笑顔を見せる。
ザ「へぇ…アンタのそういうところ、俺は好きだよ。」
カチン、と石化したかのようにその1の笑顔が消えた。
みるみるうちにその顔は真っ赤に染まった。
貴「…ッ……ッ！！」
何か言い返してやろうと思ったのに、考えている節から言葉は消えていく。
とても恥ずかしい。嬉しいのだがこうもあっさり言われると恥ずかしくて堪らない。
貴「…僕は…そうやってからかってくる君があんまり好きじゃないよ！！」
パチンと指を鳴らす。
その1が通路へ小走りに去ると同時にザッカリーの頭上から野球ボールサイズの水が落下した。
ザ「おわっ！？」
頭だけを器用にずぶ濡れにした。
ザ「…嫌いとは言わないんだな。」
その1と入れ違いにジャッジが覗く。
ジ「彼女が顔を赤く熟れた実のように赤くしていたが、君はまるで捨てられた猫のようだな。だが何処か嬉しそうにも見える。」
ザ「なぁに、ちょっとお灸を据えられたのさ。…本心って上手く伝えるの難しいな。」
ジ「若いな。彼女にキチンと本心を伝えるのは、とても難しいだろう。彼女はあまりに人とは関わらず過ごした人生が長い。距離を詰めるのにも容易ではないだろう。」
ザ「地道に少しずつかねぇ？パブロはどう思う？」
ジ「そういうのは若い君たちの仕事だ。私の仕事ではない。」
ザ「そういうなって、これでも俺割と真剣に悩んでんのよ？」
ジ「ハッ、その顔を見れば大体分かる。人と猫との表情の読み方は同じではないのだ。悩むなら悩むなりに動くがいい。」




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