20 ページ21
・
「A、ちょっといいか?」
『はい。なんですか?』
買い物袋をさげた伏見さんが話しかけてきた。
私の中で彼は買い物袋が似合う男性ランキング1位だ。
「夕飯作るのを手伝って欲しいんだが、今忙しそうだな…」
私の膝の上に乗る御影さんの顔を見て、伏見さんは困ったように笑った。
『いえ大丈夫ですよ。無理矢理どかしますので。』
「んぅ…」
私が無理矢理頭を下ろしたので、嫌そうな顔をしながら少しうなる御影さん。
『何を手伝えばいいですか?』
「じゃあ野菜を切るのを頼む。」
『はい。』
玉ねぎに奮闘する私の横で、手馴れた様子で肉を切る伏見さん。
そんな彼に少し見蕩れていると、扉から元気な声が聞こえてきた。
「臣クンただいま!あっ、Aチャンもいるッス!何作ってるの?」
「おかえり太一。今日はオムライスだ。」
「やったー!臣クンのオムライス大好きッス!」
私の幻覚だろうか。
犬の耳としっぽが付いているように見える。
『いてっ、』
「!包丁で切っちゃったのか。」
「わわっ!大丈夫ッスか!?」
太一くんの犬っぽさに気を取られてしまい、指を包丁で切ってしまった。
1日に2箇所も切り傷を作ってしまうとは、あまりにも不注意過ぎるな。
「A、ちょっとごめんな。」
『へ?』
一言謝ると、伏見さんは私の指を咥えた。
・
45人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:りおた。 | 作成日時:2020年1月31日 18時