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閉じた瞼の向こうで影が揺れて
辰哉が起きたのが分かった
ほどなくしてふわりと布団が頬に触れたのを感じると
足先まで丁寧に包まれた
辰哉が布団をかけ直してくれたことに胸が高鳴る
しばらくして部屋が静まり返り
私はうっすら見える程度に視界を広げた
その先には
抜き足差し足タンスへ向かうと
ゆっくり、ゆっくり
音を立てまいと引き出しを動かし
着替えを取り出す辰哉がいて
猫背も相まって
その姿はまるでおじいちゃんみたいで
思わず吹き出した
「ぅおっ ごめん起きちゃった！？」
肩をびくつかせて
少しうわずった声で言うからなんだかもう止まらなくて
「んははははは」
「おぉい！なーに笑ってんの」
「ごめ…ははははっ」
こらっとほっぺを膨らまして
笑ってる私に喝を入れるみたいに
私の頭を軽く叩くとその手を頭に置いたまま
「Aはもうちょっと寝てていいからな」
と指先だけでトントンとした
…辰哉は優しい
心も体も全部、包み込んでくれるような
やわらかくてあたたかい包容力がある
おじいちゃんみたいな動きをしてたのも
壁側に寝るように言ったのも
全部
私を起こさないようにするためで
だけどそれが私のためだと
あえて口にしないところが
辰哉らしいと思う
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作者名：Hoshi | 作成日時：2022年3月15日 17時
