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「A、箸の持ち方きれい」
すでに食べ終わった辰哉が
イケメンポーズをするみたいに親指と人差し指で
口元を押さえながら頬杖をついて言う
「辰哉はまだちょっと変」
「え、どこがよ」
「人差し指がピンってしてる」
「えぇまじ？前、Aに言われて直したのに」
一旦テーブルに置いていた箸を取り
何もない空中で物をつかむように動かした
「ほら、ここ曲げるんだよ
…え、硬ぁ！」
テーブル越しに辰哉の人差し指に触れると
力が入りすぎているのかびくともしなかった
「んふ、指が言うこと聞かねぇ(笑)
もうこの持ち方に慣れちゃってるわ」
何日後かには忘れているような
何でもない会話で笑い合う
こんな時間が私は好きなのだけれど
私が最後の一口を食べ終わると同時に
「よしっさっきの続きすっか〜」
と両手を目一杯上に伸ばしながらソファへ向かった
辰哉はいつも、自分より後に食べ終わる私を
待ってくれていて
「Aの食べてるとこ見んの好き」
昔はそう言ってくれていたけれど
今はどうなんだろう
私が食べ終わった途端に席を立ったその後ろ姿を見ながら
私を待つことが
したいこと、
ではなく
しなきゃいけないこと、
になっているような気がして
苦しかった
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作者名：Hoshi | 作成日時：2022年3月15日 17時
